自転車旅CAFE

自転車旅を中心とした紀行文、紀行小説

2018-01-01から1年間の記事一覧

海を渡る道

この前、日立に向けて走ったとき、もともとは計画していたルートがあった。 国道6号、日立バイパス。 この道である。 日立に着いて、駅までのアプローチに、わずか1キロ余りの遠回り。 でもじっさい走ったその日のサイクリングは、途中何度も止まっちゃ、…

烏山から日立へ(Dec-2018)

橋は周囲に類を見ない。町のシンボルに思えた。周囲からは浮くほどのテンプテーションさえ放つ斜張橋が高く、架かる那珂川をのぞき込むとすくみそうだ。路面でそんなに高いのだから、橋を支える真っ白な主塔は果てしなく高かった。それがまたシンボル然とし…

そうだ、アキュムに乗ろう

またも天気に恵まれないとは。 伊豆に、行きたかった。暖かいし(想像)。それと、枯れた細野高原の風景を見に行きたいと思った。ルートを引いて、列車の乗り継ぎを調べた。でも、雨になった。唯一低い降水確率と晴マークを出していたtenki.jpさえ、週末が近…

上総内陸から竹岡ラーメンへ - 後編(Dec-2018)

(前編から続く) 引いたルートの道がなかったから、僕らはそこにある案内標識──と呼んでいいものなのだろうか──にしたがって右に下ることにした。これから向かう養老渓谷の文字がそこに書かれていたからだ。左側なんか読めやしない。左側の字を当てようとO…

上総内陸から竹岡ラーメンへ - 前編(Dec-2018)

僕が前を走るO君の背に投げた言葉は向かい風にかき消されてしまったみたいだ。もう一度タイミングを狙って叫ぶ。「この先の橋を渡ったところで写真撮りたいんだけど」「なんすかあ?」 声の切れ端だけは届いたようで、要領は得ないんだろう、聞き返してくる…

日の沈まない海という風景

僕が自転車で走るルートを作るとき、いつもストーリィを見立てて引いている。小説を書くように、と何度かここで書いたかもしれないけど、そんな感じ。ただ小説と違うのは、ストーリィが、自分が作り上げたものですべてじゃないという点。引いたルートがすべ…

京成電車はどこの駅まで先行するか

京成沿線での仕事を取り、京成電車に乗って通う機会を得た。プライベートを含めてもなかなか乗ることのなかった鉄道なので、興味を持ちながら通勤している。 まずすぐに気付いたのが、列車種別の「普通」と呼称の「各駅停車」。ああこれ東武と同じなんだって…

旅と食事

偏食ではないのだけど、食事は偏るほうかもしれない。食にこだわりがなく、それがゆえ旅に出ても、わざわざ食の情報を集めたり、土地々々での名物を選んで食べたりすることがあまりなくて、どこへ行こうとふだんと変わらないようなものばかりを食べるので、…

伊豆大島三原山、あと海岸線とか(Dec-2018)

そういえば天気予報を追跡してなかった。 東京・竹芝に行った。船が取れた。そのまま乗った。 朝になって、東京都大島町の予報がくもりマークになっていることを知る。それまでの週間予報じゃずっと晴れマークだったのに。 今回は島を一周するつもりがないか…

寒さとウィンドブレーカーとカメラと

いつもいつも寒いときの服装は悩んでばかりで、何を何枚どう着るのかをぎりぎりまで決められないでいる。これが暑い夏だったら1パターンしかないからお気楽このうえないのだけど、ひとたび長袖が必要になると事前準備がままならなくなる。寒いのが平気な人…

東武矢板線跡・荒川源流(Nov-2018)

もともと車内の暖房は弱くて輪行中もずっと寒いと感じていた。でもいざ駅のホームに降り立ってみるとそれどころじゃなくて、その空気に震えが首筋から足の先へ一瞬で駆け下り、この先の一歩を踏み出すことさえためらうほどだった。冬がいよいよ来たんだと思…

発見ともの忘れ

地図を見ていてぞくぞくするような瞬間っていうのが、思いもかけない場所と場所とが道でつながっていること、それを発見したとき。 それがゆえに自転車に乗っているっていうのは過言じゃなくて、自分のインタレストのなかでけっこうな高い比率を占めると思う…

身延山久遠寺とみのぶまんじゅう(Nov-2018)

高速を飛ばす。快適に。 圏央道から中央道へ。日曜日の午前中、下り線は快適に流れていた。 ◆ そもそも知人夫妻との用があった日だった。しかし知人奥さんの親戚に不幸があり、ふたりは急きょ奥さんの実家のある鳥取に帰ることになった。予定は延期すること…

まちの洋食屋──市道となったかつての幹線道──

まちの洋食屋が好きだ。 多くは古くからある店で、個人店の割合も高い。個人店だと今や年齢も高くなっていて、老夫婦でやっていることも少なくない。想像するに、最近始めた洋食屋であれば大なり小なりチェーン店がどうしたって多いし、若い人が個人店を始め…

熱海峠・駿河湾(Nov-2018)

熱海峠に行こう。 行先に伊豆方面を選択した自分の行動を客観視すると、寒くなってきた、冬が近づいてきたんだなと思う。寒さに弱い僕は、寒くなると暖かい(と感じている)土地を目指すようになる。もとを正せば今日は、手持ちの小田急株主優待乗車証を使い…

酉の市

取り立てて信仰心があるわけでもなく、すがるほどの神仏を求めているわけでもないのだけど、なぜか毎年毎年、酉の市には来るようになった。もう習慣のようなもの。 会社員をやめるときに、「商いに恵まれますように」といった軽い気持と、「なんか知らんけど…

登坂行程時間のめやす ──山越えのある行程計画のために──

今度走ろうとするサイクリングで、峠に向かおうと考えたとき、計画コースのなかに山越えが含まれたとき、ふと不安に駆られることがある。「このコースを一日で走り切れるだろうか」 あるいはそもそも、「この上り坂をこの日、上り切れるだろうか」 といった─…

都沢林道・前日光牧場 - 後編(Oct-2018)

(前編から続く) 気楽さとはなんだろう。突き詰めるなら単独行動(ぼっちスタイル)に行く着くのだろうし、じっさい僕は大半がそうだ。周囲に気づかいを持って、そのぶん自分の興味をそぎ落としながら続ける旅は、僕の本質じゃない。本来の目的を手に入れら…

都沢林道・前日光牧場 - 前編(Oct-2018)

東武線のローカル系統はまったくのんびりしている。桐生線の相老(あいおい)駅へ行こうと、裏技的小泉線経由──たいていの乗換検索で単純に検索しても出ないルートだ──で効率的に乗り継いで来られたのに、太田駅でかれこれ15分以上停車している。やれやれ…

サイクリングと時計

サイクリングに出かける日は、腕時計をしていない。 むかし、好きで使っていたスウォッチのクロノグラフを自転車に乗っていて壊してしまってから。 確信ではないけど、自転車のハンドルから手を通して伝わる振動のせいだったって思ってる。ほかに記憶にない…

下仁田街道・妙義山(Oct-2018)

朝の高崎線は高校生でいっぱいの列車だった。熊谷で勤め人の恰好をした人々が降りていくと制服姿ばかりが残り、深谷、岡部、本庄とひと駅ごとに下車していく。そのひとつ、本庄駅で僕も制服に交じって降りた。 自転車を組み上げていると、臑(すね)を舐めん…

三境林道・細尾峠(Oct-2018)

自転車を買い換えた。 クロモリのフレームは、ラレーの自転車があるのだけど、ここ最近家人が乗ることが増えてきて(もともとそのつもりであったので、僕にはサイズが小さい)、きちんと用意しないといけないなと思っていた。 自転車にこだわりを持たない僕…

安物ヘルメットでも割れてくれた

細尾峠──栃木県の日光と足尾を結ぶ、旧国道122号の峠道。 久しぶりの大転倒だった。 長い長い峠道──と、日光・足尾の両入口にそう書いてある──の12キロのあいだ、車もバイクも自転車も一台も通らなかった。ひとりの人ともすれ違うことはなかった。 足尾…

続・GPSiesでグーグルマップが使えなくなった

GPSiesでグーグルマップが使えなくなっていることに気づいたのは、おとといだった。 nonsugarcafe.hatenablog.com 今日、また見てみると、グーグルマップが使えなくなったのだと、いよいよきちんと記載していた。 「もうさ、グーグルマップ(衛星地図と道路…

GPSiesでグーグルマップが使えなくなった

今現在だけのことだろうか。 僕がルートを引くのにメインで使っているサービス、GPSies──ずっと読み方がわからずにいたのだけど、ジプシーズ(gypsies)と読んでくれ、といっているのを最近知った──は、ルート作成のときにベースに使う地図が選択できる。そ…

獲得標高の算出に関する考察(ルートラボ、GPSeis、Stravaなどのルート系サービスの違い)

あくまで私個人の推察、考察です。 じっさいのところ、プランニングでルートを引いたときも、走ったログをアップしたときも、サービスごとに獲得標高が異なるというのはずっと前にも気にしていたところ。 同一のGPSログを使って、各サービスにアップロー…

ハンズ・アップ

自転車とすれ違うとき、挨拶を交わすことはよくある。 地方に行くほど、旅の色が濃くなるほど、その友好度親密度が増す気がする。 簡単な会釈、それからこんにちはと声に出して挨拶。旅先だとオートバイとも挨拶を交わすこともある。サムズ・アップ、オート…

鵜の岬・花貫渓谷・五浦海岸(Sep-2018)

茨城の海ってどんな海だろう。 僕が知るのは、大洗、阿字ヶ浦。ずっとむかしに海水浴で行った場所。砂浜にだだっ広い太平洋、都心から近い海水浴場よりも断然すいているのだけど、華やかさは控えめでどことなしか寂しさがある。そういえば学生の頃、学校で知…

バッグはいいけど荷物がね

大容量サドルバッグの出現って、ちょっとした革命だった。 それまで宿泊をともなうサイクリングの場合、①シートポストキャリア+10L程度の積載バッグ、あるいは②リュックだった。 やっぱり宿泊込みの荷物をリュックやザックで背負っていくのはしんどくて…

里の道、浦の道/房総半島サイクリング(後編)(Sep-2018)

(前編から続く) 海編、である。 今日の旅のステージを「山/里の道」から「海/浦の道」へ切り替えよう。意識や旅との向き合いかただ。物語の転換点であり、大切なことだ。できるだけ明確に、スイッチを切り替えるように、パチンと。 切り替えはわかりやす…