自転車旅CAFE

自転車旅を中心とした紀行文、紀行小説

海を渡る道

 この前、日立に向けて走ったとき、もともとは計画していたルートがあった。
 国道6号、日立バイパス
 この道である。

 

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 日立に着いて、駅までのアプローチに、わずか1キロ余りの遠回り。
 でもじっさい走ったその日のサイクリングは、途中何度も止まっちゃ、景色を見たいとかそこにいたいとか、自転車を置いて、崖斜面ののり面に上って、座って足をぶらぶらさせながらぼーっとしていたりしたから、すっかり時間も押して、すっかり日も傾いて、寒くなって、結果的にこの道に行かなかった。
 日立駅に着き、眺めた海に張り出したこの道を見た。

 

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 大田原のぽん太さんがほぼ時期を同じくして日立を走っていた。この記事を書くにあたって、聞くと引用をこころよくオーケーしてくれた。

 

blog.livedoor.jp

 

 国道6号日立バイパスの、この海に張り出した旭高架橋は、そうなのか自転車通行止めなのか。

 

 

 震災より前だったからもうだいぶ古い話になるけれど、国道6号をずっと北上するサイクリングをした日があった。そのときはどうしただろう。このバイパスの存在は記憶にあるし、このときも海の上を走る道だと思った。道の記憶がある。
 しかしながらじっさい走ったのかどうかをまったく覚えていない。でも、これだけ堂々と自転車通行止めの標識があるのだから、気づいて走っていないだろう。

 

 僕は高所恐怖症なので、好き好んで走るわけではないのだけど、この海上の道ならば話のタネに走るのも悪くないと思った。それで今回、計画には含めてきた。
 計画通りに海沿いに向かっても──浜の宮公園のループ橋を下って日立バイパスに入り込もうとしていた──、どこかで足止めを食らったはず。計画をやめずに向かっていたらきっと、悔しかっただろうな。

 

 海の上を走る道というと、思い出すのは静岡県大崩海岸だ。
 静岡から焼津へ抜ける場所である。海岸線いっぱいまで山がせまる地形を、東海道は宇津ノ谷峠へ向かい、東名高速と海岸線近くを走ってきた国道150号、東海道新幹線日本坂トンネルへと消える。海沿いをゆく東海道本線も用宗の駅を出てすぐにトンネルに入ってしまうが、道路の最も海岸線をなぞる県道416号・用宗街道だけが、用宗駅前を過ぎても難所の海沿いを伝う。かつては海岸線に落ち込む急峻な崖に付けられた道だった。しかしながら地形ゆえ受ける災害で崩落に見舞われ、道の修復を断念した結果、海岸から海に張り出した橋を造ることになった。海を越えて行くわけじゃない。陸地に道路が付けられず、やむなく海上を迂回したって道だ。海上を渡る橋から、かつての崖に付けられた道を、すでに廃道化した状態で見ることができる。
 僕はここを一度走ったことがあった。
 しかしまた残念なことにこの道の記憶がない。走ったという記憶はあるのだけど、だ。
 そこから見える風景とか、廃道化した旧道の様子とか、海はどうなのか、道はどうなのか、そんな何かひとつでも覚えていたらと思うのだけど……。
 道は路肩のない二車線道路で、正直狭い。中央線のオレンジラインには鋲が打たれ、それを越えて反対車線にはみ出すことを拒む車がいると、僕の後ろに車の列が出来上がってしまう。それが気になって周りなど見ていなかったのかもしれない。後方に渋滞を造ることを嫌って。

 

 高所恐怖症を押してでも、一度くらい走ってもいいなと思う。記憶にとどめながら。しかし国道6号日立バイパスの旭高架橋は走れないことを認識した。思いつくのは大崩海岸しかない。

 

 まあ、何かの機会ついでに、ね。