自転車紀行
旧名鉄美濃駅をあとにした僕は、ここから長良川鉄道の沿線旅を始める。長良川鉄道はその名の通り長良川に沿って走る鉄道で、美濃太田を出て関からは終点の北濃に至るまで長良川と並んで行く。国鉄時代は越美南線という名で(現在も路線名は長良川鉄道・越美…
ホテルで朝いちばんにモーニングを食べ、一度部屋に戻って荷物を持ってチェックアウトした。昨日樽見駅で輪行パックしたあと、そのままホテルにチェックインして部屋に持ち込んだので、自転車は輪行袋に入ったまま。これを担いでホテルを出て、また岐阜駅の…
大垣から三駅。10分少々で岐阜に着いた。 お昼過ぎ、輪行袋を持ち18きっぷを見せて通過した有人改札。もう一度、同じように通る。 ホテルは歩いて2分程度だったから、輪行袋を担いだまま向かった。そのままチェックインして、そのまま部屋へ入る。輪行…
揖斐線から分かれた谷汲線は大きく右にカーブしながら進路を北に変えた。 そのカーブに沿った道はないので、しばらく大野町の町なかを走った。歴史の残る町なみだ。美濃の観光地に多いうだつを備えた家も見られる。関東甲信越に多い農家のような家屋もある。…
僕が廃線跡をたどるときは、その土地の雰囲気やなり、、を感じ取ったり、あるいは走っていた列車から見えたであろう景色を想像して楽しんでいるので、必ずしもその路線の遺構や痕跡を見出すことに喜びを感じているわけじゃない。でもやっぱり、そういうもの…
事前から決めてかかりすぎると大ごとになる。もっと日帰りの延長のような気軽さでで臨めないか。そのフットワークの軽さを認識したのが昨年の奥会津の旅だった。錦秋の折、紅葉前線の進みとお天気から出かけることを決めた金曜日、自転車旅仲間のうっちぃさ…
伊豆は林道の宝庫だ。房総半島は地図をくまなく見ていくと細かくたくさんの林道が張り巡らされていて、情報もたくさんあるので"林道半島"として有名だけど、伊豆半島だって同じだ。いくつもの県道未満、、、、の道路が地図に描かれ、土地と土地、道と道を結…
ガストでモーニングを食べた。春日部で朝からやっている喫茶店って、西口からずいぶん行ったところのコメダと星乃くらいで、東口には皆無だった。唯一春日部市場内に喫茶店があるのだけど日曜日はお休みらしく、やっと見つけたのが国道沿いのガストだった。 …
輪行袋を抱えてわざわざ取手止まりの快速に乗ったのには訳があって、今回手に入れたいきっぷ『ときわ路パス』が茨城県内の駅じゃないと買うことができないからだ。本来乗りたい水戸ゆきのひとつ前の電車に乗って、利根川を越えた最初の駅、取手で降りた。階…
少しだけ日の当たる木更津駅の端のホームから久留里線のディーゼルが発車した。たった1両の気動車は座席が半分埋まった程度だった。内房線の線路から右にそれてゆき、広々とした田園のなかをたった1両の気動車が走る。電化していない久留里線は架線柱がな…
それは地図上白線で示されている道だ。もちろんそんな道は全国たくさんあるし、今回出かけた伊豆にだってたくさんある。そのなかで目についていたのが、西伊豆の海岸線井田(いた)という集落から内陸の真城(さなぎ)峠へとつながっている白い道だ。 僕は1…
自転車で鉄道線路沿いを走るのが好きだ。ここでも前、それに触れた気がする。──確かそのはず。忘れてる……、まあいいや。 電車に乗って車窓を眺めていると、明らかに幹線道路とは違う道が並行して続いている。線路わきをぴったり並走することもあるし、少し距…
風邪を引くのは悪くない。むしろ年に一度や二度は風邪を引くべきだ。そのほうが体は強くなるし定期的に抵抗力がアップデートされる。これは持論である。だから風邪を引くことはかまわない。 しかしよりによってだ。今日は木曜日である。 午後に入ったころか…
(その4から続く) 「ああなるほど炭酸水だ」 ほのかな甘みと酸味を感じるのはそれが炭酸のせいなのかあるいは何かの成分によるものなのかわからなかった。僕の味覚は大したことないし怪しいから仕方がない。それでもきめの細やかなしかしそれなりに強さを…
(その3から続く) 午前6時30分。 外は霧に覆われていた。それもあたり一面重苦しい灰色で、先はほとんど見えず、スキー場で厚い雲に巻かれてしまったときのようだ。目の前の国道を走る車のヘッドライトが直前にならないと見えてこない。そんな状況だか…
(その2から続く) そこが食堂だと知らなければ存在に気づかなかったろう。暖簾(のれん)が出ていなければ食堂とはわからなかったろう。 福島県金山町、会津川口駅前。 実は僕はここに来ている。何年も前の夏のことだ。 その日、僕は六十里越の国道252…
(その1から続く) 駅の改札をそのまま出てきた人もそれなりにいたのだけど、知らぬ間にみないなくなってしまった。もっとも降車客の行く末を観察していたわけでもなく、僕は僕で輪行してきた自転車の組み上げを離れたところでやっていたのだから、それがわ…
なんだか一日で帰ってしまうのがもったいないですね、泊まれば六十里越にも行けそうな場所ですし──。 準備に頭を巡らせていた仕事からの帰り道だった。帰りの通勤電車は三連休を前にした金曜日のせいかいつもより華やいだ雰囲気で充ちていた。19時過ぎの電…
旅に、来ています。 そもそもうっちぃさん(先週もご一緒した)と「出かけます?」と話したのが昨日の昼休み。会津方面に行きますかと手持ちのルートを持ち出して、夜帰って準備していたところ、「せっかく会津まで出かけて、その日に帰っちゃうのもったいな…
(前編から続く) 「寒いです」 そう僕は答えた。坂を上ってくるあいだは青い空から覗く日が差し込んで暖かかったし、急な勾配もあったからそこでは汗もかいた。栃木県道249号・黒部西川線、鬼怒川から川治と走ってこの道に入った僕とうっちぃさんは、土…
土呂部(どろぶ)の紅葉を見に行きたかった。何年か前から話をしつつも実行に至ってないうっちぃ(@ucchii_da)さんと行きたかった。ひさしぶりの連絡を入れ、そして話はまとまった。紅葉前線を日々追いながら、行くならこの週末だと思っていた。ここしかな…
日光、第二いろは坂を上っていた。 あと二週間、待てば奥日光は真っ赤に燃えるような山々の風景を見せてくれるに違いなかった。あるいは暑さの残る今年の秋、時季は少しの前後があるかもしれない。でもそんなことはわかっている。わかっていて今ここを上って…
長野県、村山橋へ行った。 長野電鉄の線路が千曲川を渡る橋。 同時に、国道406号が千曲川を渡る橋でもある。 鉄道道路併用橋。 橋としては二世代目。もともと併用橋だった橋は、新たに掛け替えられても併用橋だった。複車線化された国道406号、この長…
下今市駅、午前8時。 列車から輪行袋を持って降りたのは僕ら三人だけじゃなく、ほかにも何人かいた。なんで下今市なんだろうって思う。だって列車は東武日光行きだし、その日光まで行かずに途中で降りてしまうのだから。この辺、ごくふつうの自転車乗りだっ…
(前編から続き) 魚沼展望台は魚沼スカイラインのなかで最も高い場所にある。魚沼盆地を一望でき、石打、大沢、塩沢、六日町と魚野川流域にだんだんと広がっていく日本の穀倉地帯の風景が手に取るようにわかる。それと同時に六日町や十日町の展望台ではなか…
テーマがまず浮かんだ。米を見に行く、そう決めた。そう考えたのは8月に林道河原小屋三の宿線(前日光基幹林道)へ出かけた日。そこまでのアプローチで走った鹿沼市内の田んぼのなかの道で。まわりの稲穂たちはまさに金色に染まるのを目前にしていた。一部…
急に決めて南栗橋ゆきの電車に乗った。天気予報の気温を見て涼しげだった嬬恋パノラマラインに行こうかと考えたのだけど、車のあてもなく、かといって鉄道アクセスの大変な場所へ、前夜の準備状況から始発に合わせて起きられる自信もなく、あっさりあきらめ…
大糸線、信濃大町駅を降りた。午前11時前。 18きっぷだけで来た。東武線最寄駅からじゃ間に合わないから、JR武蔵野線の南越谷駅まで自転車で走ったうえで。そこから輪行。移動に6時間近く費やしたってことだ。 ある意味驚く。ここまで18きっぷで(…
前夜、ビジネスホテルの狭い部屋でずうっとだらけていた。夕飯に米沢の名物駅弁『牛肉どまん中』を買ってきて、味噌汁代わりにカップラーメンを添えた。ダラダラとローカル局のTVを垂れ流しながらそれらを食べ、終えてひと休みしてから買い出しに出たとき…
おそらく僕が蔵王の地蔵を見たのは、スキーがまだブームと呼ばれていたころだったと思う。冬、お地蔵さんのいる山頂まで行くにはロープウェイに乗らなきゃならず──それ以外に山頂まで行くリフトは今も一本もない──、輸送力の低いこのロープウェイではブーム…