獲得標高の算出に関する考察(ルートラボ、GPSeis、Stravaなどのルート系サービスの違い)
あくまで私個人の推察、考察です。
じっさいのところ、プランニングでルートを引いたときも、走ったログをアップしたときも、サービスごとに獲得標高が異なるというのはずっと前にも気にしていたところ。
同一のGPSログを使って、各サービスにアップロードしたり、ログの中身に持っている標高からも自分で計算して比較してみたこともあった。
(この記事を読み返して、Garmin CONNECTのアカウントなんか持ってたんだ、と今さら苦笑した。)
ずっと使っていれば傾向というのはわかるもので、ルートラボと僕が主に使っているGPSies──読み方について、「なんてクソッたれな名前? ジプシーズ(gypsies)と呼んでください」と隅のほうに記載があった──で1.3倍から1.6倍程度、ルートラボとStravaでは1.4倍から1.8倍程度、違いが出るというのが体感。Stravaは使う機会がかなり少ないので、そんなに参考にはならないけれど。
いちばん少なく出るのがルートラボだ。
そのなかでも傾向的に、上り一辺倒のルートは差が出にくいというのを体感している。例えば、富士山スカイライン周遊区間のログ、この道はとにかく上り、ひたすら下るというルートだった。
と差はきわめて少ない。
対して、JR五能線沿いの日本海岸を走ったときのログ、こちらは山も峠もないものの、細かな上り下りが入り乱れ、坂はけっこう多かった印象だ。
もはや倍である。
こういった差は傾向的であるように感じていて、細かな起伏が多ければ多いほど差が広がるんじゃないかと見ている。つまり、
標高を評価する地点の多い少ないによるのではないか──
ということである。
現在いるA地点から、向かっているC地点は、坂の上にあるとしよう。ただしその途中、いったんB地点に向かって下ったのち、上り返した先にC地点がある。
こんな具合だ。
【図1】
上り坂はB地点からC地点であり、100メートルかけて10メートルの標高差を上る。したがって獲得標高は10メートルである。
しかしながら、獲得標高計算をするさいに、このB地点を評価点に含めなかったとすると、計算上のプロフィールはこういうことになる。
【図2】
つまり計算上はA地点からC地点まで、150メートルかけて5メートルの標高差を上るルートなのだ。当然、獲得標高は5メートルである。
評価点の数に差があるとすれば、こういった細かな獲得標高の差が積み上がり、簡単に500メートルや千メートルといった差になるんじゃないだろうか、というのが僕の推測である。
そして、図2にあたるのがルートラボであり、図1にあたるのがGPSiesやStravaなんじゃないか、と思っている。
もしこれがそのとおりだとすれば、実態に近いのは図1であり、GPSiesやStravaなのだと思う。
そしてこれは計算される勾配にも差が生じ、GPSiesやStravaは10%の勾配とするところ、ルートラボは3.3%の勾配とする可能性はある。
他に考慮すべきは、峠をトンネルで通過するような場合に、評価点をトンネルではなく山稜部に取ってしまい、大きな差が生じる場合がある。ルートラボでもあったし、GPSiesでもあった。こういうのはもう個別に見てつぶしていくしかない。とはいっても、各サービスともこの地点の誤評価は年々少なくなっていってるように思う。
評価点が少ないといっても、1キロ単位でガッツリ抜けてしまうことはないだろうから、伊豆のようなキロ単位での上り返しよりも、50メートル100メートルのなかでの細かな起伏で差が出るんじゃないかと思う。
それと根本的な問題として、そもそも各サービスが持っている、あるいは利用している地点標高データは正しいのか、という問題はある。これが頼りにならなきゃ、評価地点の数うんぬん以前の話だけど、そこは信頼するしかないかなと思う。
◆
獲得標高って結局のところ自分の経験値との照合に使う指標(このくらいだとまあ上れる、こんなになるとしんどい、一日で行ける、行けない、など)だろうから、どれかに決めて数値を見ていけばいいんだと思う。これまでルートラボで獲得標高を見てきた人はルートラボで見ればいいだろうし、Stravaの数値を基準にしている人ならStravaで見ればいい。じっさいのところ、本当の値なんて、自分で行って丁寧に測量でもしないとわからないのだから。であれば、ある決められたロジックに乗っかって導き出せばいい。そのロジックは各サービスが持っているものなのだから、同じサービスを使っていれば、別の山でも別の峠でも、指標として見合う数値が出てくるはず。
気をつけなきゃいけないのは、人からいわれたり、イベントや大会で公表されたりしている場合だ。「週末走るコースは獲得標高500メートルちょいだから気にしなくていいよ」とか、「獲得標高2500メートルに達する本格的グランフォンド」とか、そういうたぐいである。それが何で導き出した値なのかによってまったく違う。「500メートルっていわれてたから気楽に考えてたけど、死ぬほどきつかった」や、「うたい文句は盛りすぎ、期待してた満足度に至らなかった」なんてことになるわけだ。
僕の場合、可能ならルートをGPXでもらい、僕が使っているGPSiesに入れなおすようにしている。そうすれば、「おいおい、聞いてないよ」ってことは少なくなるからね。
※特に登山をする方など、「獲得標高と累計標高の定義を取り違えている」と違和感を感じるかと思います。が、自転車趣味界では累計標高を獲得標高という言葉で使用するほうが通例化しており、本来の獲得標高(=累計標高上りー累計標高下り)の情報は重要ではないため注目されることも希少です。したがってこの記事では「獲得標高」で統一した記載としています。