自転車旅CAFE

自転車旅を中心とした紀行文、紀行小説

2017-01-01から1年間の記事一覧

空梅雨

入梅はした。でもそれからどれだけ傘を差して歩いただろう、ほとんど記憶にない。2回か、せいぜい3回か。 空梅雨なのかな、今年は。 自転車に乗る身としては、あきらめていた季節に自転車で出かけられる日が増えてうれしいことこのうえないのだけど、水不…

JR只見線に沿って

只見線の全線が、再び手をつなぐことはあるのだろうか。 そう、長いこと思い込んでいた。 ──あるのだ。 2011年の新潟・福島豪雨によって大きな影響を受けたこの路線は今もなお、只見駅と会津川口駅のあいだが不通のままだ。日に何本しか走ることのない閑…

焼いものカフェ

そういえば焼いもっていつから食べていないだろう。 まだ二十歳を過ぎたばかりのころ、スキーに熱中していた僕は、いよいよシーズンが始まるぞという10月、新しいスキー用品を見てまわりにお茶の水に行った。これからもっと本格的にスキーをやってみたいん…

日光市道1002号、小田代ヶ原から千手ヶ浜へ(Jun-2017)

僕は今ここにある重機に目を疑った。それはあまりにも不釣り合いで、想定外だったから。そして少なからずショックだったから。 中禅寺湖の西の裏手にある千手ヶ浜は、そこへ向かう道からすべて、大観光地・奥日光とは思えない静かで自然なままの光景で、異次…

旅の荷物の変化

やっていることはサイクリング。輪行袋を携えて、鉄道に乗ったり自転車に乗ったり、そんな旅を続けている。それ自体は10年以上たっても変わっていない。 だけど持ちものが数年で変わった。時代が流れて、サイクリングも変わってきたのだ。◆ まず、地図。 …

両毛散策 - 足利・佐野

両毛とはどのあたりを指すのか、具体的な線引きはあるんだろうか。いにしえの国名、毛野国(けぬのくに)から、その地域が下野(しもつけ)と上野(こうずけ)になり、そのときに省かれた「毛」を、それぞれ合わせて両毛などと呼ぶわけで、ようは下野と上野…

東武日光線の急行、ピーク列車

4月のダイヤ改正があって、それから日光方面へ行くことがなかったので、快速が廃止され、置き換わった「急行」に乗る機会がなかった。 とはいっても、もともと日光・鬼怒川へ輪行するときでも、快速に乗ることはあまりなかった。特に6時台の快速。とても混…

サイクリングロードという選択肢

知人のMさんが自転車に乗り始めて一年になったと聞いた。なるほどそうでしたか、おめでとうございますとお祝いの言葉を送った。買いものや用事以外で自転車に乗ることなどなかった人が、僕の書いた文章を目にし、旅に興味を持ち自転車に興味を持ち、自ら自…

富士山スカイライン(May-2017)

「富士山は登る山じゃなくて見る山だと思ってるんですよ」 そう僕に言ったのは山歩きを趣味とする友人だ。小さいころから山に親しみ、高校大学とワンダーフォーゲル部や山岳部に所属し、今でも歩いている彼から聞く話ではどうやら縦走を好む。興味本位で連れ…

富士山スカイライン

富士山スカイラインという名は愛称であり通称、正式には表富士周遊道路というのだけど、どうしたって通称のほうが通りがいいし、この道路の構成から言っても「富士山スカイライン」であるほうがいいように思う。 それはこの道にふたつの区間があるから。 ひ…

伊豆大島サイクリング島(May-2017)

5月の快晴の日よりだった。東京や埼玉は30度を超えた真夏日になると言っていた。でも同じ東京都ながら伊豆大島は別。気温予想を見ると、最高気温は24度になっていた。 だから最高の気候のもと、サイクリングできたに違いない。僕は13時過ぎの元町港で…

野反湖分断国道の最果て

分断国道をご存じだろうか。 日本にいくつかある。本来は一本の道路なのだけど、道路をつなぐことができずに、しかしながら双方向から同じ国道番号で届かない空中ブランコで手を伸ばすように、プツリと切れている道だ。 そのほとんどが急峻な山を越えること…

三浦半島海岸線めぐり

三浦半島はこんなにも坂が多いのか──海岸段丘で切り立った半島は丘と断崖で海に張り出している。車で渋滞する主要道路をはずしてゆくと、細く、くねくねと折れ曲がった急な坂道ばかり。上って、下る。また上る。 三浦半島の古くからの沿岸集落は、海岸レベル…

渡良瀬遊水地と太平山謙信平で関東平野の広さを体感(栃木県・埼玉県・群馬県・茨城県)

渡良瀬遊水地は、ここが関東地方であることを忘れてしまう、広大な空間。その中の谷中湖は、沿岸に周遊する広い道路がめぐり、車は通行止め。ウォーキング、ラン、自転車からインラインスケートやクロカンスキーの練習の人まで、思い思いに楽しめる場所。自…

房総の里山を堪能する(千葉県)

千葉県は、里みちと呼ぶにふさわしい小径(こみち)が多く残っている。都市部はさすがに区画整理の波に追いやられているけれど、それでも千葉市にだって多くの里みちが残っているのが驚きである。 このルートは安房の内陸を横断する旅。 保田から鴨川という…

バス路線の魅力

自転車で走っているときにバス停を見つけるとうれしくなる。国道や大きな幹線道路ではそれほどの感慨はないけれど、交通量もあまりない、自分だけが走っているような道にバス停が現れると格別である。その地の生活道路や山越えの一本道なんかだ。 そういう道…

ブレーキシューの交換

目に見えて、ブレーキシューが減っていた。特にフロントブレーキ。知っていつつも、溝を見てまだいけるなと使い続けていた。でもさすがにね、そんな状態になった。この前の雨中のサイクリングがきいたかな。 ブレーキシューを注文して、あとは交換の機会を待…

渋沢丘陵から足柄、金時隧道(May-2017)

パン、という大きな音がその日のケチの始まりだった。 それは初め自分の足もとで起きた音とは思えなくて、広がる畑のなかの鳥獣除けの空砲か、あるいは山のなかでの狩猟の発砲か、そんな遠くの場所での火薬を使った音にしか聞こえなかった。 でもすぐあとに…

三浦半島の行き止まり

三浦半島にはとても素敵な場所がある。そこはみな行き止まりで、主要道からは入り込んだ場所にある。 三浦半島はサイクリストも多く、走っていると何人もの自転車とすれ違い、追い越される。首都圏でありながら風光明媚で、非日常間も味わえる。海なし県に住…

自転車で坂を上るために(2)

前回、自転車で坂を上るためには、慣れと意識を持てるように、坂を上りに行きましょうって話をしました。同じ坂に繰り返し出かけると、それを早く得られますという内容とともに。 速くなる必要のない僕らにとって、上れればいいわけですから、メンタル面が大…

自転車で坂を上るために(1)

自転車に乗っていてつらいもののひとつが坂。そういう僕も坂はつらいし好きじゃないんです。 とはいえ僕の自転車紀行は山だったり峠だったり、いわば坂を上って出かけているものが多くて、ギャップに思えるかもしれません。でもそこはそれ、僕が行きたいとこ…

春の太平山と渡良瀬遊水地(Apr-2017)

前日の茨城県北のサイクリングでずぶ濡れになり、意気消沈して帰ってきたところへ、翌朝は太陽の下で背伸びをしたくなるような晴天になった。そうそう行くわけではない茨城県北で、どうしてこの天気にならなかったかと悔しくてならなかった。でもそれはそれ…

久慈川と多賀山地(Apr-2017)

週末どこかへ行く予定があるかとMさんから連絡があったので、茨城県北方面に行こうかと思っているところですと答えた。それならば一緒に行きたいと言うので、であればぜひと答え、取手駅で待ち合わせをした。 なぜ茨城県北で、なぜ取手駅なのかというと、J…

秩父ミューズパーク・春

秩父の高台にあるミューズパークという公園、ここを最初に訪れたのは昨年の秋だった。 秩父ミューズパークは中を自転車でも楽しめる公園で、レンタサイクルも用意されていることは知っていた。とはいうものの、規模的には南北に4キロばかりで、国営のひたち…

円盤餃子と冬の残片

餃子というと、僕の持っているイメージで言うなら、宇都宮、浜松、福島。特定のブランド餃子──それはホワイト餃子や亀戸餃子のような──を除くとそんなところ。 そのうちのひとつ、僕は福島へと向かっていた。 もともとこの週末は輪行サイクリングを考えてい…

駅そばと旧友

駅そばが好きである。ふつうにそばも好きなのだけど、駅そばも好きだ。立ち食いそばも好きだけど。 そば通からすれば駅そばや立ち食いそばはそばではないらしいけど、僕からすると駅そばや立ち食いそばというのはいわゆるそばとはジャンルの異なる食べ物だと…

OVE-マクロビランチを食べる

ここがカフェだと通りすがりに気づくのは難しい。扉が閉まっていれば店のなかをのぞくこともないし、通りから見た窓越しの店内もせいぜいクリエイターズ系のオフィスかなにかだろうと連想して通り過ぎるに違いない。 OVE。 南青山。シマノが運営している…

銀山温泉と峠の力餅

銀山温泉の名は、子供のころから、知っていた。 それは小学生のころに買った、日本交通公社出版のガイドブックに載っていたから。タイトルは忘れてしまったけれど、関東からの温泉旅行のようなもので、当時主流の新書版だった。温泉の紹介とそこへの簡単な行…

早咲き桜をめぐって見沼、安行

どちらかというと花をめでるほうではない。花の知識なんてほぼないから、目にした花がなんであるのかを聞かれても怪しい。墓前花以外で花屋に足を運んだことがない僕は、花が咲いていれば、ただ遠巻きにながめて、種類も、名前も、わからないままに、きれい…

冬よ、グッドバイ

梅が咲き、河津なんかの早咲きの桜が咲き、やがてソメイヨシノの桜前線が天気予報に登場する。暖かい日もあらわれ、それにつられて人びとは春を探しに出かける。 テレビも、人も、みな春を迎える話題だ。春一番が吹き、さまざまな花の写真や映像で、マスメデ…