自転車旅CAFE

自転車旅を中心とした紀行文、紀行小説

両毛散策 - 足利・佐野

 両毛とはどのあたりを指すのか、具体的な線引きはあるんだろうか。いにしえの国名、毛野国(けぬのくに)から、その地域が下野(しもつけ)と上野(こうずけ)になり、そのときに省かれた「毛」を、それぞれ合わせて両毛などと呼ぶわけで、ようは下野と上野を合わせた地域と考えればいいのだろうか。下野は栃木県南、上野は群馬県南、それもJR宇都宮線とJR高崎線とのあいだに呼称されるように見受ける。JR両毛線沿線や例幣使街道沿いあたりだ(ちなみに下野、上野となる前あるいは一緒のころなのかわからないけど、下毛野国(しもつけのくに)・上毛野国(かみつけのくに)という呼称もあったとか……詳しくないのでわからないのだけど)。

 そのあたりの歴史からの流れはともかく、この一帯をぶらり散策するのはなかなか楽しい。

 下野に当たる栃木県側、足利と佐野を散策しに、自転車を持って出かけた。



 歴史が深いうえ、街道も通り、農工商業が時代々々にあわせて発展してきたものだから、いろいろな時代のようすが折り重なるように雑多に存在している。町も、そこでの建物も、道路も。

 まず足利からスタートした。

 GPSマップは持ってきたのだけど、ルートは準備していない。道路を見て地図と照らし合わせながら、気分のままに走れればいいかなと思った。

 思い返してみたら、JR両毛線足利駅って初めてその駅前に来たかもしれない。南口も北口もまわってみたのだけど、どちらも記憶にない。北口のロータリーわきに電気機関車「EF60」が保存されている。来たことがあればこの記憶はきっと残るに違いない。

 足利学校にもばんな寺にも織姫神社にも寄らず、路地をぐるぐるとめぐる。そういった観光地を備えた場所だから、居心地のよさそうな洒落たカフェも多くある。そば屋もある。足利はそばが有名みたいだ。こちらは昔からあるのだろう。

 トンネル通りというごくごくシンプルな名前の道で東へ向かい、さらにあみだくじのように道を東へ選択していくと、突然急な坂が現れた。それほど長い坂でもなく、何度かのつづら折りで丘を上っていくと、足利市を一望する景観が現れた。織姫神社に上って眺めた風景もそうだけど、渡良瀬川をたたえた平野の風景は大きく見える。いくつもかかる橋がいろいろな形を見せている。

 となりの佐野市と比べると面白い。佐野市渡良瀬川に数えるほどの橋しかかかっていない──国道50号と県道が2本、あとは東北自動車道だけだ。逆にここ足利市は橋が充実している。渡良瀬川のサイクリングロードを走っているとよくわかるのだけど、足利市では数百メートルおきに橋があり対岸への往来は自由気ままだけど、佐野市に入ると途端に渡ることができなくなってしまうのだ。これはおそらく佐野市のほぼ全域が渡良瀬川をまたいでいないからで、逆に足利市渡良瀬川の両岸にわたる市で、相互の交通のために橋は欠かせないんじゃないか、などと勝手に解釈した。となりの群馬県桐生市足利市と同じだ。

 市内の様子を眺めながら一気に丘を下った。

 下った場所は富田という町(足利市)。

 ここもまた、あてどもなく東に向かう。GPSマップでつながっていそうな道を選んでは入って行ってみる。

 そうやって佐野まで出かけて行った。


 佐野でも厄除け大師によることもせず、路地を縦横に走った。

 この町も同じ。時代が脈絡もなく混在した町だ。JRと東武の共同駅である佐野駅だけ、妙に近代的で大きかった。

 そして東武佐野線佐野市駅へ。

 構内配線が佐野駅に比べて多くてびっくりした。東武にとってはこっちのほうが佐野線の主要駅だったのかもしれない。

 駅前ロータリーが、もし僕が鉄道模型をやるような趣味人だったら、きっとこういった駅前を再現したくなるに違いない、そう思わせる、昭和から取り残されたまんまの駅前だった。

 飲み物を飲んで休憩。──さあ、足利へ戻ろう。帰り道はできるだけ両毛線の線路伝いを走ってみようか。


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足利駅南口/ローカル線の駅って感じ

足利駅北口/足利学校、ばんな寺、織姫神社など観光スポットを控えるだけある、立派な駅舎とロータリー

▼EF60型機が静態保存されている/両毛線の貨物輸送を担っていたんだとか

足利市内の雑多な街

▼小高い丘から眺める平野部

▼古くからの街道筋のせいか、駅に関係なく集落が続く/突然造り酒屋もあらわれた

佐野市内の雑多な街

東武佐野線佐野市駅

▼帰りは線路沿いを

▼午後、時間の流れが徐々にゆるやかになるなか、渡良瀬川に出てみた

▼はしゃげ、存分に、──今が青春だ

(本日のマップ)