自転車旅CAFE

自転車旅を中心とした紀行文、紀行小説

野反湖分断国道の最果て

 分断国道をご存じだろうか。

 日本にいくつかある。本来は一本の道路なのだけど、道路をつなぐことができずに、しかしながら双方向から同じ国道番号で届かない空中ブランコで手を伸ばすように、プツリと切れている道だ。

 そのほとんどが急峻な山を越えることができず、つながっていないところばかりだ。

 もっとも分断国道という言葉自体、僕がここで勝手に持ち出して使っているにすぎず、定義もないから、例えば鹿児島の種子島から奄美大島沖縄本島へつながる国道58号など、海を渡っている形になるけど、これを分断国道と称すべきかどうかは悩むところ。個人的には除外かな。


 例えば挙げるなら国道401号。尾瀬を介して福島県群馬県がその手を伸ばしている。国道291号は清水峠。清水峠ではイメージ湧きにくいけど清水トンネルと言えば場所もわかりやすい。群馬と新潟県境で、登山道のみがある。

 そして今回は国道405号。群馬県、かつての六合村、現在の中之条町から長野の県境へ向かう。分断された反対側は、長野県の栄村から群馬に伸びようとしている。群馬県からの分断箇所には野反湖がある。ここから先、登山道以外の道はなく最果てだ。高山植物の咲き誇る野反峠を訪れる人も多い。


 輪行の荷を長野原草津口駅で解き、まず国道292号で旧六合村へ向かって上っていく。ここにかつて鉄鉱石を運んでいた貨物線があったのだそうだ。もともとはこの輸送のために吾妻線もあったのだとか。僕はこの道を一度走ったことがあるのだけど、この貨物線のことを知らなかった。国道292号に並行して走っていた貨物線跡が道路として残っている箇所がある。そのルートを引いてみた。終点の太子(おおし)駅は公園になっているそうで、車止めや鉄鉱石を積み込むホッパの跡が残されているという。

 太子を過ぎ、かつての六合村の中心街を過ぎたら国道292号は草津温泉を目指す。ここで分かれる国道405号がこの道の起点だ。分断された最果ての野反湖まで行ってみよう。


 行き止まりルートの欠点は、同じ道を帰ってこなきゃいけないことだ。でもここは行って帰ってくるだけの場所だと期待。戻ってきたらそのまま長野原草津口に戻るのではなく、六合から暮坂峠に向かってみたい。

 暮坂峠を越えると沢渡温泉に出る。この辺りは温泉の宝庫だ。しかも近年掘り当てた日帰り入浴施設のための温泉じゃなく、むかしながらの温泉だ。たくさんあるうちのひとつが沢渡温泉。沿道に共同浴場があるから手ぬぐいを持って立ち寄ってみようかな。

 温まったら、湯冷めしないよう気を付けつつ、中之条の駅へ下っていこう。



地図

ルート(GPSies)


*****


(みどころ・立ち寄りどころ)


太子駅:かつて長野原駅から分岐していた太子貨物線(日本鋼管群馬鉄山専用線)の終点。現在は公園になっている。

野反湖信濃川水系ダム湖。湖岸は高山植物の宝庫。道路でのアプローチは群馬県側からしかできないが、野反湖からの水は長野県を経て新潟県へ至る面白い位置関係。

暮坂峠:中之条と六合を結ぶ重要な交通網。現在は県道55号。若山牧水が旅して随筆を残した。

沢渡温泉:著名人も多く訪れた群馬の名湯のひとつ。