自転車旅CAFE

自転車旅を中心とした紀行文、紀行小説

空想自転車旅行 - 国道362号全線走破(静岡駅-豊川駅)

 こんな折、自転車にも長いこと乗らずに過ごしているから、思い描くだけでも楽しめたらって空想旅行に出てみることにした。想像はときに現実を凌駕する。地図と情報で広がる無限世界。
 今回は静岡県から愛知県へ、国道362号を全線走って。それじゃ出かけましょう。

 

 

 久しぶりの国道全線走破企画。今回チョイスしたのは国道362号、愛知県豊川市から静岡県静岡市に至る全長約150キロの国道である。

 

 昨年春、大井川鉄道沿いをサイクリングした。いい季節だった。茶の芽が吹き、雪解け水が柔らかく大井川を編んで流れた。天気にも恵まれて、青空のもと緑のなかをコトコトと電車が走った。踏切は昔ながらの鉦をたたいて鳴っていた。
 千頭に着くと自転車をばらして輪行袋に詰め、大井川鉄道で来た道を戻った。僕がよくやっている鉄道沿線自転車旅&輪行旅のひとつだった。

 

 ここ大井川に沿ったサイクリングルートを考えているとき、地図でいつも目に留まるのが、静岡市中心部と奥大井とを結ぶ何本かの国道や県道だ。介する身延山地を越えて千頭や井川などと結んでいる。
 もちろん大井川鉄道沿いサイクリングに出かけたときも目に入らなかったわけじゃない。でもこのときは鉄道沿線自転車旅に徹していたから盛り込まなかった。
 そろそろ、計画してみようか──。
 どの道を選ぶのかもぜいたくな選択だ。口坂本から大日峠を越える県道27号、国道362号から分岐して藁科川に沿い富士見峠に至る県道60号もいい。横沢集落から笠張峠に出て稜線に沿って県道60号と合流し富士見峠を目指す県道189号のルートも魅力的だ。これらはいずれも井川を目指すルート。いっぽう千頭を目指すルートは富士城ふじしろで山塊を越える国道362号である。
 ふと、この国道362号がどこまで行っているのか、気になった。
 身延山地を越えて奥大井に出るルートのなか、唯一の国道である。千頭に下りたらそれで終り? まさかそんなことはないよね──。
 調べてみると、道は愛知県から来ていた。お稲荷さんの豊川市まで至っていた。しかも線籍上は起点がそちらで静岡は終点となっていて、いい方としては「愛知県豊川市から来ている道」というのが正しい。
 大きく分けると三つの顔を持っていた。ひとつは豊川から浜名湖北岸の気賀に至る姫街道区間。いわゆる東海道脇街道で、厳しい取り調べで知られた新居関を嫌い、特に女人が多く選択したことからその名で呼ばれたと聞く。それから道は姫街道を離れ、現在の天竜浜名湖鉄道に沿って天竜川の町・二俣に至る旧街道区間。そしてふたつ目は北遠・春野町の山里。秋葉神社の総本山、秋葉山本宮秋葉神社があったり、昭和の町なみ集落や昭和の山里が残ってるとか。そんななか南アルプス赤石山脈)の南端をなめるように、大井川沿いかつての中川根町を目指す、懐かし原風景区間。そして三つ目には先にも挙げた奥大井千頭から身延山地を越えて静岡市中心部へ至る、急峻、狭あい、屈曲が続く、その名も酷道区間
 僕が知っていたのはこの三つ目の区間だけだったので、まず姫街道が同じ国道であったことを知って驚いた。そしてその両者がどうやって手をつないでいるのかが気になった。いってみれば未知の土地だ。これはもう全線を通して国道362号が持つすべての物語を受け止めるしかない。
 二日間かけて旅をしよう。まずは静岡へ向かおう。

 

(Day1・ルート)

 

輪行Day1】

東京610--(東海道本線・熱海行)--759熱海
熱海802--(東海道本線・静岡行)--920静岡

 

 静岡は新幹線だろうよ、ってのは置いておき、僕が乗れる東海道線のいちばん早い列車で向かう。
 豊川ではなく静岡に向かったのは、僕の頭のなかの国道362号ってやっぱり、静岡から千頭に向かう道だから。知らなかっただけではあるけど、ここは主たる印象に重きを置いて、終点から起点に向かうことにした。
 人の乗り降りの多い駅。流れに乗って改札を出たら北口へ向かう。静岡って駅は輪行下車駅には大きすぎる。好みでいうなら、小さな、味わいある駅で降りて自転車旅をスタートさせるのが好きだな。

 

【サイクリングDay1①】

静岡駅950--(国362)--1020新東名交点
新東名交点1020--(国362)--1050オクシズの駅 きよさわ里の駅

 

 静岡駅北口を出てすぐにある常磐町2丁目交差点が国道362号の終点である。北口に出るとせっかくだしと、駿府城の周りをひとまわりしたいとか、住宅街の中をゴトゴト走る静鉄に沿って自転車を走らせたいとか、ついつい余計なことを考えてしまうから、いっさいがっさい振り払って国道を走ろう。3キロもすると安西橋で安倍川を渡る。橋からすぐ下流側に望む合流点は藁科川で、国道362号はここから先しばらく藁科川に沿って遡上していく。
 川の心地よさを感じるなら初夏だね。茶畑も目に映えるだろう。この藁科川沿いも茶畑が目に入るだろうか。きっと見られると思う。新潟県が、どんなに狭いところでもすき間さえあれば水田を作るように、静岡県は同じように茶を育てるのだ。じっさい地図記号を見てみたら、針葉樹林に囲まれる狭いところに茶畑の記号が点在しているのが目に留まる。
 上空果てしない高さを新東名が横切っていく。もはや飛んでいるかのようで、人間はこんなものを造ってしまうのかと空恐ろしくなる。でも不思議なもので車で新東名を走っているときは何のことはない、ふつうに道路を走っている以上の感覚を持つことはない。
 藁科街道の名を持つこのあたりは、細かなトンネルが立て続けに現れる。灯火類ははじめからつけておいたほうがよさそう。
 しばらくすると昼居渡ひるいどという集落に入る。ここの八幡という交差点で富士見峠を越えて井川に向かう県道60号を分ける。ここ、国土地理院の地図によると読みが「やはた」と書かれているのだけど、じっさいここの交差点にある交差点名標識には「Hachiman」とローマ字付記されている。どっちなんだろう。そして国道は清沢橋で藁科川を渡るが、川もここで黒俣川を分ける。藁科川と一緒に上っていくのは県道60号のほうで、国道362号はここから黒俣川に沿って行く。
 そこから1キロ余り行くと「オクシズの駅 きよさわ里の駅」という場所に着く。道の駅のようなものだろうか。どうやらそうらしい。休憩できるようになっていて食堂も併設している。ここで10時50分。少し早いけど昼食にしてしまおうか。なんでもイノシシ焼肉定食なるものがあるらしい。ジビエかな? それを食べよう。

 

【サイクリングDay1②】

オクシズの駅 きよさわ里の駅1130--(国362)--1145県32分岐
県32分岐1145--(国362)--1300市道蛇峰線合流
市道蛇峰線合流1300--(国362)--1320オクシズの駅 杉尾はなのき展望休憩所
オクシズの駅 杉尾はなのき展望休憩所1330--(国362)--1400富士城 林道幡住線交点
富士城 林道幡住線交点1400--(国362)--1425千頭 県72交点

 

 11時半、出発。
 すでに川に沿って山が迫りくる地形だ。藁科川沿いを走っている頃からそうだったのに、まだまだ茶畑が現れる。というよりむしろ茶畑が増えてきている。道路と川とのあいだの狭い平坦な土地にも、間隔のぎっしり詰まった何層もの等高線のあいだにも、茶畑の記号があるのだ。新潟の水田のような執念さえ感じてしまう。
 清笹峠を越えて川根町の笹間渡へ向かう県道32号を分け、川もまた分かれる。黒俣川は県道32号のほうへ上っていき、支流は氷川という。さらに行くと市道蛇峰線を分ける。市道は一度ここで国道と分かれてまた戻ってくる。峰山という集落を通り、蛇塚という集落でまた戻ってくるので、その頭文字を取ったんだろう。この道も地図で見ると強い魅力がある。つづら折で上り、峰山の集落へ入っていく道に後ろ髪を引かれるけど、今回は国道362号をたどる旅だ。左へ目で見送るだけにしておく。
 この市道を分けると勾配がぐんときつくなる。というか想像を絶する。なにしろ数値上の平均で10%を超えているのだ。12%、14%、18%の応酬で知られるかの明神・三国峠が数値上の平均では9%台後半(確か9.7とか9.8とか)だから、これはもうとんでもなく恐ろしいことだ。もう計画段階からあきらめる。降りる、休む、ときにどうにもならなければ押して歩く。それで行こう。
 そんなとんでもない勾配も、分けた市道蛇峰線と再び合流すると落ち着く。氷川はいつの間にか見えなくなり、いよいよ源流域を越えた。少し休むように走ったら、「オクシズの駅 杉尾はなのき展望休憩所」に着く。休憩することにする。
 きよかわの里の駅と同じ「オクシズの駅」だが、静岡市内に20か所ほどある道路休憩施設を総括した愛称だそう。公募によって決められたらしいのだけど、海沿いにある駐車場は「奥静」ではないからという理由でオクシズの駅ではないらしい。
 きよかわの里での昼食が早かったからもしかしたらお腹が空いているかもしれない。だとしたらここ杉尾はなのき展望休憩所でも軽食くらい食べようか。10分、休憩時間を取った。

 

 身延山地を越えるピークは富士城で迎える。どんな風景がそこにはあるんだろう。なんてことのない風景かもしれない。「峠」と名がついていても切り通しのなかまったく眺望がないってのもたくさんある。ましてここは峠の名前すらないのだ。期待などしないほうがいい、きっと。
 それよりも地図を見ていて驚いたのだけど、富士城から南に林道幡住はたすみ線という道が出ている。この林道自体は先ほどの杉尾はなのき展望休憩所近くで国道362号に戻るのだけど、その途中、山稜に沿った枝道が出ているのだ。その行きつく先には「小猿郷」の文字。道は途中、849.6メートルの三角点を過ぎたあと山の斜面を転がり落ちるように急降下し、目測1.5キロ強で717メートルへ、さらに目測1キロ強で564.6メートルの三角点へ下る。数値を見ただけでもとんでもない急降下で、小猿郷川が流れる場所にたどり着く。道はそこで途絶えている。つまりこの道は谷底へ突き落され、そのままどこにも行けずに行き止まりになるのだ。しかし小猿郷の地図をよく見てみると、10軒ばかりの住居と、その周りに茶畑の記号が見えるではないか。

 

▽小猿郷

 

 ここに営みがあるのか……。こんな場所に、谷底に。──あるいは本当に桃源郷のような場所なのかもしれないね。
 ニッポンってすごい。人ってすごい。いつか別の機会に、この地を見に行ってみたいって思った。

 

 下って千頭大井川鉄道の本線の終点。
 時間に少し余裕ができていたなら、駅に立ち寄ってみようかな。

 

【サイクリングDay1③】

千頭 県72交点1435--(国362)--1515下長尾交差点 県263分岐
下長尾交差点 県263分岐1515--(国362)--1555天空の茶産地川根
天空の茶産地川根1555--(国362)--1635久保尾辻峠
久保尾辻峠1635--(国362)--1735気多郵便局
気多郵便局1735--(国362)--1805春野(秋葉神社下社)

 

 大井川と、大井川鉄道に沿って下る。
 昨年鉄道沿線自転車旅をしたときは、主に対岸の県道77号をたどった。そういう点ではこの国道362号で縛りをかけていることで目新しさが生まれた。
 大井川鉄道も道も、川の流れについていけず、右岸に行ったり左岸に行ったりを繰り返す。今の時代なら、川面ギリギリまで急峻な崖が近づけばズドンとトンネルでぶち抜いてしまうんだろうけど、崖が迫ったら追い出されるように対岸に逃げる。
 鉄道が下泉の駅に着くころ、国道362号はいよいよ大井川に別れを告げる。
 すでに時は15時過ぎ。もうひと山越える必要がある。それを越えれば、春野の町だ。

 

 どこまでも続く茶畑は本当に場所を選ばない。どれだけ山の斜面が急であろうと、そこで茶を育てるのだ。それは一昨年、炭焼平山林道の帰り、竜爪山りゅうそうざん・穂積神社から静岡市内へ下る急な坂道で、まったく同じことを実感した。ここ川根でも天空の茶畑などと呼ばれる地がある。いやそう呼ぶのはここにやってきて驚きの風景を実感した人だ。この地の人には当たり前の光景にすぎない。

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 久保尾辻くぼおつじというところで峠を迎える。町も川根から春野(現在は浜松市天竜区春野町)になる。分水嶺を越え、大井川水系から天竜川水系になる。思えば一日、安倍川水系大井川水系天竜川水系分水嶺を越えてきたのだ。その本流、天竜川に向かって下っていく。廃校があったり小さな集落があったりするなかを下る。
 気田けたに入ると久しぶりの町だって思う。そして町のレトロ感がいい。そこに「あおねり」って書かれた看板。和菓子店。
 あおねり──なにそれ? 春野の郷土和菓子、なんだそれ?
 17時半を過ぎている。手に入れられるだろうか……。
 懐かしさに浸るという意味で、ここ気田から分かれる県道389号(水窪森線)を8キロほど山に入っていった先にある旧勝坂小学校やその周辺の集落にもとっても興味がある。

 

 さあ、もう6時になる。一気に下ろう。

 

 下ってようやく着いた春野の町の中心。ここで一泊する。

 

 

(Day2・ルート)

 

【サイクリングDay2①】

春野(秋葉神社下社)900--(国362)--945峯小屋トンネル
峯小屋トンネル945--(国362)--1040双竜橋(二俣本町
双竜橋(二俣本町)1040--(国362)--1145気賀

 

 朝、9時よりも早く発てたなら、秋葉神社に立ち寄ってみよう。
 もちろん目の前の下社だけ。山中の上社に行くには、片道5キロの登山道を歩いて往復するか、雲名うんなまで下って、天竜スーパー林道を上り直さなきゃならない。さすがに国道362号全線走破の主旨も外れるので行かない。下社だって、ちらっと見られればいい。
 出発したら朝いちばんから上り坂。前日春野の町に入ってからずっと沿い続けていた気田川を離れて山中に入っていく。上って下ってもう一度上り返して峯小屋トンネルで山越えをする。越えてからも下り基調ながら、集落の名にもなっている横川に沿ってアップダウンを繰り返す。それは二俣川と名前を変えてからも同様で、開けた町なかに入るまで変わらない。
 おそらく前日静岡市中心部を発ってからいちばん大きな町じゃないだろうか、二俣町。突き当りには鉄道と駅が現れる。天竜浜名湖鉄道(通称天浜線)の二俣本町駅だ。

 

 何年か前にこの町をぶらぶら歩いたことがある。浜松からやってくる遠州鉄道に乗ってここまで来た。二俣本町の駅を降り、町なかをジグザグとあみだくじのように歩いたりしながら天竜二俣駅へ戻った。遠州鉄道天浜線を網羅したフリーきっぷがあって、確かそれを使ってこの一帯から浜名湖周辺、鉄道に乗り周辺を散策をした日だった。最後は天浜線浜名湖を眺めつつ新所原まで行った。楽しかった。
 町の風景を思い出すだろうか。きわめて素朴だった。裏返せばありきたりで特徴がないようでもあった。それがよかった。
 国道362号は右折し、天浜線に沿って行く。ほどなくして鹿島橋で天竜川を渡る。諏訪湖を源流に、南信を流れてくる大河。春野で国道沿いを流れていた気田川もこの天竜川に合流している。

 

 20キロほど走ると浜名湖の北端、気賀の町に至る。気賀の町なか、関所跡で国道362号は右折する。ここで左から直線的に入り込んでくる道が浜松からやってくる姫街道である。ちなみにこの交差点、「気賀四ツ角」というのだけど、じっさいは変則五差路になっており、構造が名前に反してわかりづらい。
 2年前、「ハマイチ」をした折にこの町にも立ち寄った。関所跡を見学し、駅にも寄った。前年の大河ドラマ井伊直虎だったせいか、駅舎もホームの屋根も赤く塗られていた。丸に橘の家紋も金色で染め抜かれていた。大河の影響力たるや……。ずいぶん月日は流れたけれど、変わらずにあるのだろうか。それくらいの演出ならいいのだけど、町なかに大きな文字で「大河ドラマ・おんな城主直虎」の文字をいくつも見るにつけつい顔をしかめた。それくらいのことで興ざめしていく僕は、たぶんよろしくない。

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【サイクリングDay2②】

気賀1145--(国362)--1225三ケ日
三ケ日1310--(国362)--1420旧本坂トンネル

 

 晴れて姫街道となった国道362号に前日の静岡市内の酷道の印象はかけらもない。引佐細江いなさほそえと呼ばれる奥浜名湖の湖岸風景が広がって、気分は一転マリン、、、になる。別の道に乗り換えたくらいの印象だ。山あいの森林や茶畑の中をゆく狭あい・屈曲道路の印象はもうない。
 佐久米さくめを過ぎ都筑に来て見えてくるのは猪鼻湖。この気賀から三ケ日までの湖岸を走るうち、どこかに入ってい昼食を取ろう。うなぎ屋が多そう。でも並んで待つような店は避けたいし、そうなるのならありきたりな定食屋やそば屋でかまわない。

 

 三ケ日を過ぎると姫街道は山越えに進路を取る。国道362号にとっては最初で最後の県境である。本坂ほんざか峠がそれにあたり、中世までは本坂通と呼ばれる主要道だった。江戸の時代に入り東海道が整備されると主要道はそちらに移り、本街道の東海道を男と見立て、脇街道となった本坂通は女に見立てて姫街道と呼ばれるようになったという諸説のひとつもあったりする。
 国道362号は現在、直線的に貫かれた本坂トンネルで県境を越えている。が、ここはつづら折と古いレンガ積みのトンネルで越えている旧道に行ってみようと思う。地図で見る限り、旧道は国道指定をすでに外れてしまっているように見られるんだけどどうなのだろう。国道標識(通称おにぎり)など見つけられたら楽しい。

 

【サイクリングDay2③】

旧本坂トンネル1430--(国362)--1500当古橋
当古橋1500--(国362)--1510馬場町交差点
馬場町交差点1510--(県5, 県495, 他)--1515豊川駅

 

 トンネルを越えたそこは愛知県である。豊橋市豊橋市もわずかかすめる程度で、10キロにも満たないうちに豊川を渡る。この当古とうご橋を渡れば豊川市だ。
 豊川市に入ったすぐ、1キロ少々で国道151号との馬場町交差点。ここが国道362号の起点であり、今回の旅の終点である。
 長かったようで、終わってしまった。そのまままっすぐ進むと道は県道5号と名を変える。豊川駅豊川稲荷もすぐそこだ。
 時間に余裕ができていたら豊川稲荷でも立ち寄ってみようか。いやいや、二日間の旅を終えてコーヒーでもゆっくり飲みたいぞ、喫茶店がいいんじゃないか?
 ──っと、輪行の時間は大丈夫か?

 

輪行Day2】

豊川1534--(飯田線豊橋行)--1546豊橋
豊橋1600--(東海道本線・浜松行)--1635浜松
浜松1637--(東海道本線・熱海行)--1853沼津
沼津1903--(東海道本線・小金井行)--2108東京

 

 東海道線普通列車は、新居町弁天島のあいだで浜名湖を渡り、天竜川と豊田町のあいだで天竜川を渡り、金谷と島田のあいだで大井川を渡り、安倍川と静岡のあいだで安倍川を渡る。国道362号で越えてきた分水嶺、そこから海にそそぐ河川を帰路輪行でひとつひとつ渡っていく。前日降り立った静岡駅では多くの人が降りて入れ替わりに多くの人が乗ってくる。僕の目に、ふだんと変わらない光景が少しずつ入ってくる。
 富士山は見えるだろうか。運が良ければちょうど、真っ赤に染まっているに違いない。ロングシートに座る僕は体をひねって窓のほうに向いてみた。列車はさった峠下の洞トンネルに入った。

 

 

※ サイクリングのタイムテーブルは、僕のふだんからのおおよそのペース、力量をもとに設定しています。多くの自転車乗りの方であれば、このルートを数時間早く走り切れると思います。

※ 作成したルートはAllTrailsのページからダウンロードできるようになっていますが、GPSies時代と変わってアカウント登録しないとダウンロードはできないようです。ルートを手に入れたい場合は恐れ入りますがアカウント登録してみてください。

※ 道は国道でこそありますが、山岳路も含まれるため通行規制がかかる場合もあります。念のためこちらなどで事前に確認するのをおすすめします。

 

 

 それでは、また自転車に自由に乗れる日が来ることを楽しみにして。