自転車旅CAFE

自転車旅を中心とした紀行文、紀行小説

房総方面新型車両と209系

 JR東日本が房総ローカル向けにE131系という新型車両を投入するそうだ。
 首都圏に初めてのE100番台形式は、新潟地区を走るE129系によく似ていて、3扉をそのまま4扉にした車に見える。2両1編成のユニットでワンマン運転対応(ただし料金収受はなし)も同じようで、内房線の木更津から先、外房線の上総一ノ宮から先と佐原からの鹿島線に導入されるそう。

 

 房総ローカルとは千葉県の千葉駅から先の運用で、総武本線成田線外房線内房線成田線の先の鹿島線が括られて呼ばれる。総武快速が一部乗り入れることはあっても、房総ローカルの車両が千葉よりこっち(東京方面)に乗り入れてくることはない。もともとは113系という総武快速と同じ型式が4両や6両で走っていたんだけど、113系が引退となったとき、総武快速にはE217系、房総ローカルには別の車両が入って見た目にも差別化された。
 初めに入ったのは211系で、東北線高崎線を走っていた車両がやってきた。これでそろえるのかと見ていたらみるみる増えていった。銚子に、八日市場回りでも成田回りでもやってきたし、安房鴨川に外房回りでも内房回りでもやって来た。
 が、じつに短命だった。せっかく帯までブルーと黄色に変えたのに。
 ある日千葉駅で見たのは、JR顔をした安房鴨川行きだった(113系も211系も国鉄車)。
 車両は209系、水色の帯を巻いてかつて京浜東北線を走っていた車だった。

 

 

 そういえば初めて見たとき、何じゃこりゃって思った車両だった。当時の京浜東北線は、山手線と同じステンレスの205系が数本走っていた以外は水色ベタ塗りの103系“国電電車”だった。そこへまったく輝き気のないステンレスボディに水色と黒の帯を巻いた電車が入ってきた。車体には901と書かれていた。車内は妙に薄暗くて狭苦しく感じた。人間味なくドアが閉まり、けたたましいインバータの音を残して出て行った。すんげぇの来たなって思った。
 その試作車901系は209系と改め、帯をすべて水色に統一して京浜東北線に増殖していった。またたく間に。気づいたら103系はいなくなっていた。ステンレスで統一されたかぁなどと思っていたら、205系さえもどっかへ行ってしまったことを知った。京浜東北線は209系で統一された。
 その後、これがJR東日本の首都圏の基礎になった。僕が当時仕事に行くときに乗っていた総武中央各駅停車にも209系がやって来た。でも乗ってみると全然違った。車内は明るいし狭さもなかった。むしろ広々と感じた。同じ形式ながら500番台の番号が振られていて、別の車両に感じるほどだった。総武中央各駅停車にもみるみる増えていき、さらにちょっとだけ顔色の違う車まで入った。500ではなく950番台の数字が振られていた。この車両は音もけたたましくなかった。ああ首都圏の国電たちはこうなっていくんだなと、当時秋葉原駅のミルクスタンドで牛乳を飲みながら思ってた。
 総武中央各駅停車にいた209系950番台はいつの間にかE231という形式に改番され、次々に量産された。そしてその形式は総武中央各駅停車だけじゃなく、山手線や他のかつての国電に入り、さらには東海道線東北線高崎線といった中距離電車もこれに変わっていった。これを刷新したE233という形式が登場すると、いち早く京浜東北線にも入ってきた。気づいたら、時代の楔となったいちばん最初の暗くて狭い209系は、もう京浜東北線にいなかった。

 

  

 千葉駅に入ってきた209系は紛れもなくそれであった。でも帯は青と黄色の房総カラー(211系に巻かれていた色だ)に変えられていた。トイレもつけられていた。一部の車両にはボックス型のクロスシートも装備された。壁の色も少し明るく変えられたんだろうか、京浜東北線のときの暗さは感じなかった。ただこれは走っている路線の印象の差だってあるかもしれない。都心のごみごみした京浜東北線と、房総ローカルの海と山と田園と自然の風景とじゃ第一印象だって変わってしまう。
 京浜東北線から大変身を遂げた209系は房総に活躍の場を見出すと次々に仲間たちを呼び寄せた。外房線内房線を走り始めると、そこにいた211系は総武本線成田線に集められたようだった。こうして外房内房両線がまず209系への置き換えを完了し、でも総武成田両線の211系もそう長くは居続けられなかった。ここにも209系が入ってきて置き換えが進むと、いよいよ房総ローカルはすべて209系に統一された。

 

 生まれ変わった209系がけっこう好きだ。都心のど真ん中を走っていた味気なくて無機質で暗くて狭かった電車が、こんなふうに生まれ変わるとは想像していなかった。明るく広く感じられる車内は別の形式みたいだし、ボックス席やその席の窓際にあるカップトレイなどは旅行気分を演出してくれる。盤石な基盤ができあがったと思っていた。
 この改造209系には4両編成と6両編成が存在する。それぞれが単編成で走ることもあれば、連結して運用に入ることもある。4+4で8両、4+6で10両といった具合だ。さすがに6+6の12両は見たことないけれど。
 ただこの車両が安房鴨川近くを走るとき、銚子近くを走るとき、鹿島線を走るときなど、持て余している感があった。でも209系という形式は4両よりも短くすることができない。

 

 そこでこのE131系なのだろう。2両、ワンマン運転でじゅうぶんなんだろうな、そういうことだと思う。

 

 持て余し気味とは書いたけど、混雑している場面に出くわすこともある。日によるし時間にもよるだろうし、乗客の顔ぶれによることだってあるかもしれない(釣りグループ、ハイカーグループに遭遇すると混んでいることが多い)。日々乗るわけじゃないから正直なところはわからないけど。
 新型車両、輪行や鉄道旅で使い勝手がいいといいな。

 

▽新型E131系

 

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▽113系の頃

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▽211系と房総向けリニューアル209系

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京浜東北線引退後、常磐線高萩駅に留置されていた209系

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(なぜに、こんなところに?)