美濃たび鉄道沿線2Days - Day1 名鉄揖斐線・谷汲線跡・樽見鉄道編その3 (Mar-2020)
大垣から三駅。10分少々で岐阜に着いた。
お昼過ぎ、輪行袋を持ち18きっぷを見せて通過した有人改札。もう一度、同じように通る。
ホテルは歩いて2分程度だったから、輪行袋を担いだまま向かった。そのままチェックインして、そのまま部屋へ入る。輪行袋のまま、自転車を部屋の隅に置いた。
夕飯を食べに行かなくちゃ。
フロントのラックから持ってきた、周辺飲食店の地図を眺めた。まあ予想通りだったけど、飲み屋が中心。食事を主体にやっている店が見当たらない。イタリアンもあるけど、バルの延長っぽい。元気な時なら勇んで出かけて、「お酒飲まないんですが、かまいませんか?」と聞くのだけど、ちょっとその気力はないな。
洋食屋ないかな。今度はグーグルマップを見てみる。──ない。まったくといっていいほど。範囲を広げながら調べて、名鉄岐阜駅近くにようやく一軒。でもコース主体のディナーっぽい。ドレスコードはなさそうだけど、そういう店にひとりウィンドブレーカーで入るのは避けるべきって、さすがにそのくらいのわきまえはある。
食事主体にできそうな店は、ホテルの地図で見つけた餃子屋と──岐阜にも餃子文化があるの?──、宮本むなしって店のふたつ、それからグーグルマップで見つけたコース系洋食屋だ(いちおう店構えだけ見てみることにする)。それしかない。ホテルの編集が偏ってるんじゃない、どうも本当に飲み屋ばかりなんだ、これ。
街に出るともうすっかり夜だった。僕は友人に「宮本むなしって何? 知ってる?」と送った。それから今の食欲にいちばん合う餃子をまず狙った。
駅前の交差点を横断することができない。地下道にまわされる。
「この地下道には防犯ベルが設置されています。危険な時はボタンを押して下さい。」
これって、火災報知器なんじゃ?
◆
餃子は、超人気店みたいだ。ざっと20人が並んでいる。
──これに並ぶ気はないな。
ブブー、スマートフォンが振動する。
「関西や中京にあるやよい軒」
と友人。
「なるほど。ありがトンペー」
と僕は返す。
大きな通りに出て、ちょっとわかりにくい場所にくだんの洋食屋を見つけた。二階への階段の昇り口に黒板があって、上からコースが二種。アラカルトは下に。──そういう店だね、オッケー。こんな恰好じゃないときに、いつか。
そして最後、宮本むなしとやらへ行ってみた。なんで「武蔵」じゃないの? 行く前からむなしくなりそうで、いささかテンションが下がり目。
すぐにわかった。自動ドアを入ると食券機。──なるほど、やよい軒だ。
◆
さて、あすのことを考えなくちゃ。
長良川鉄道の不通の状況は、午前中、浜松駅での乗り換え時間に電話で聞いてみた。美濃太田と関のあいだが不通で、代行バスを走らせているとのこと。ホームページでの情報と変わらない。関と北濃とのあいだは通常通り運転している。ホームページに「列車運行も遅れが発生する可能性」と記載があったけど、特にそんなことはなさそうだった。
「北濃を14時06分に出る普通列車は運転しますか?」
「はい、関まではダイヤ通り運転します。ぜひお待ちしています」
僕はその北濃を14時06分に出る上り美濃太田行きに乗る計画だった。それが美濃太田に16時37分に着く。17時ちょうどの高山本線に乗り継いで、岐阜へ。岐阜から東海道本線で名古屋、名古屋を18時08分に出るこだまに乗る予定にしていた。
代行バスの時刻が長良川鉄道のホームページに掲載されている。
北濃を14時06分に出る列車は、関に16時14分に着く。接続する代行バスは16時17分発。これが美濃太田に着くのが16時57分となっている。
これは、無理だなあ……。17時ちょうどの高山本線まで3分しかない。そして当たり前だろうけど、「道路事情等により予定の時刻で運行できないこともございます。」と注記されている。
太多線をまわって中央本線経由で名古屋に入る方法もあるけど、これも17時05分発。バスという乗り物を考えると8分でもリスクだ。
鶏肉と彩野菜黒酢あんかけ定食が来た。なんか、大戸屋でよく食べるようなものを頼んでる。
──関から岐阜に走るってことはありなのか?
地図の位置関係からすると、関まで南下してきた長良川鉄道は東に向きを変えて美濃太田へ向かう路線だ。美濃太田からの高山本線は、西に向かって岐阜に戻って来る。美濃太田をまわるぶん、
おまけに高山本線も決して本数の多い路線ではない。
関まで輪行してきた自転車を再び組み上げ、岐阜駅まで走り、再び輪行する──状況によっちゃこれだってやむを得ないんだ。
高山本線からの乗り継ぎを考えていた東海道線は、岐阜を17時38分に出る。関到着が16時14分だから、1時間24分ある。
じゃあ距離だ。ガーミンに入れているあすのルートは、岐阜を出てかつての名鉄美濃町線に沿って走り、関へ向かうルート。ちょうどこの逆を走ることになるんだ。──21キロ。
輪行を解除して自転車を組み上げて、21キロ走る。再び自転車をばらして輪行パッキングする。これを1時間24分。
いや無理だわ……。
だいたい21キロを時速15キロで走るって計算するとぴったり1時間24分だって。ウケる、全然無理。今日だって、無理やり計画を立てるために時速17キロや18キロで設定した区間でどれだけ遅延させたっていうんか。
そこは頑張れば──いや、頑張れるものじゃないし。もし仮に行けたとしても、パンクやトラブルのリスクはさすがに考慮する。何かひとつでも事が起きたらアウトだ。
じゃあ美濃太田はどうだ? 16時14分着、美濃太田17時ちょうど発の高山本線、この間を46分、自転車でつなぐってのは。
グーグルマップで距離を調べた。──13キロ。ああだめか、これもだめだ。
もともと、北濃まで行くことは考えてない。関から長良川鉄道に沿って走り、行けるところまで行こうという判断だ。距離もあるからどのくらいの時間で行けるのか、体力的にどうなのか予想がつかない。だから僕は長良川鉄道の北濃14時06分発の列車時刻表と、それを逆にたどっていった各駅の距離を対比した表を作っていた。どの駅で終りにするか、走りながら決められるように。
もし北濃まで全線を走り切れたらそれは嬉しいけど、そこはこだわりポイントじゃない。
──だったら、はなから行けるところまでってことでいいわけだし。
長良川鉄道を一本前の列車にしよう。
北濃12時40分発。1時間半近く早い。1時間半はもったいないな。でも仕方ない。この列車が郡上八幡を13時27分に出る。なら、このあたりかな。関には14時21分に着く。
その先は代行バスにしようが、もう一度自転車を組み立てて走ろうが、どうにでもなりそうだ。名古屋18時過ぎのこだまに乗ることができるだろう。
ちょっと残念だけど。
◆
店を出てホテルに戻る。
岐阜駅前に置かれたモ513がライトアップされていた。
(つづく)