自転車旅CAFE

自転車を中心とした、旅のエッセイ

蓄電池車と東武特急リバティ

 先日、久しぶりに栃木県北、烏山や馬頭といったあたりを自転車で走った。

 県道すら田舎道でいい感じ。龍門の滝に立ち寄って、滝駅から烏山駅までの線路沿いの道を走った。この道、短いながら好きだ。

 

 さてこのとき、滝駅の目の前の踏切を通過した。烏山線は一時間に一本程度の過疎路線だから、列車に出合えることはごくまれなのだけど、この滝駅に偶然にも烏山行きの列車が停車していた。

 音もなく、停車していた。

 ──そうか、烏山線はしばらく前に、蓄電池車のEV-E301系に置き換えられたんだっけ。

 

 

 東北本線の列車からの窓越しに、この愛称「アキュム」と呼ばれる車両を見たことがあるけど、こうまじまじと目にするのは初めてだった。あわててカメラを起動し、写真に収める。

 列車は、駅を出ていった。ほぼ、無音だ。もちろん音がないというわけじゃなくて、日産リーフみたいな音はする。

 

 龍門の滝へ走り、そこから烏山の町に入ったので、駅に寄ってみた。

 先ほどの列車が、折り返しを待ちながら、駅のホーム上にだけある架線にパンタグラフを上げ、充電していた。

 

 

 

 蓄電池車は烏山線を刷新した。がらがらがらとアイドリングするキハ40系を一掃し、電車の静寂と最新の車両を得た。電化などできない過疎路線ながら、内燃の動力を廃したのは烏山線の路線長にあるのだろう。

 残念ながら蓄電池車は長い距離をその電池のみで走ることができない。このEV-E301系は蓄電池で50キロ走ると聞く。裏返せば50キロしか走れないということだ。

 今後蓄電池の性能が格段に上がるとは思う。──にしても、長い非電化路線には投入できない、限定的な車両といえるんだろう。

 

 じゃあどこなら走れるんだろう。ふと、考えてみた。

 烏山線以外で現在、この蓄電池車両が走っているのは東北の男鹿線と九州の筑豊線。いずれも非電化区間の路線長は短く、直通する路線に電化区間があって、充電しながら電車として走ることができる。

 似たような境遇、どこがあるだろう。

 おっ、──会津鉄道は?

 

 

 東武鉄道は昨年、26年ぶりになる特急車両「リバティ」を投入した。これまでのスペーシアとの大きな違いが3両編成であること。これによって、野岩鉄道会津鉄道に乗り入れることのなかった特急が始めて、会津田島駅まで乗り入れることになった。

 会津田島まで、というのはその先の会津鉄道が非電化だから。

 

 特急リバティが会津田島までやってくるようになると、それに接続するリレー列車が運転されるようになった。

 その前からも、鬼怒川温泉までの特急スペーシアに接続するように、会津鉄道気動車、AIZUマウントエクスプレスが、電化されている東武鬼怒川温泉まで乗り入れて、浅草からの特急から一回の乗り換えで会津若松や、日によっては喜多方まで、乗り通せるように運用している。

 リバティ、これが蓄電池車になったら会津若松や喜多方まで、浅草から乗り換えなしで行けるよ……。

 

 乗り換えが一度であれ、向かいのホームであれ、乗り換えは乗り換え。なけりゃないに越したことはない。

 それに、多大な期待を込めている部分はあるにせよ、リバティリレー列車やAIZUマウントエクスプレスのスペーシア接続を運用しているということは、浅草から会津方面への一直線ルートの需要を見込んでいるわけだ。

 もちろん、会津若松や喜多方への乗り換えなしアクセスも魅力的だけど、会津鉄道の中間点にある湯野上温泉やら芦ノ牧温泉塔のへつりや大内宿なんかへの直接アプローチも魅力だ。会津若松だったら郡山乗り換えの新幹線+磐越西線と二分されるルートも、それら中間点に対しては新幹線の利用はきわめて少なくなる。現在でも東武ルートに分があるこれらの場所だけに、直通特急の効果が得られるのはむしろこちらなんだろうと思う。この地区へのメインルートは現在、ツアーバスだ。

 

 でも、リバティは特急車両だから、走行以外に必要な電力も大きいと思う。空調、照明、トイレや洗面。特急車両だから走行性能もそれなりに必要とされ、普通列車より大きな機器、電力を必要とする機器が搭載されているはずだ。3両ぶんの車両を特急車両として走らせる性能を維持し、特急としての居住空間の快適性を維持するのに必要な蓄電池を搭載できるスペースもないんだろうなと思う。

 会津鉄道の非電化区間も微妙に長い。

 会津田島から先、西会津までの42キロに加え、JR只見線会津若松までの3.1キロも非電化だ。烏山線の20.4キロの倍以上の距離がある。運行障害での長時間停車を想定した場合、現在の倍以上の蓄電量を必要とするはず、きっと。

 おまけに、今になって、決定的なことに気づいた。

 会津若松駅でJR磐越西線から電気を買い、充電すればいいと思ってた。烏山線が終着烏山駅でそうしているように。

 しかしながら、磐越西線は交流20000ボルトでの電化だった。

 だから直流1500ボルト仕様のリバティが磐越西線で充電することはできないし、まして喜多方まで乗り入れて走行することもできない。

 会津若松駅に給電専用の直流1500ボルト架線を用意してくれとJRに頼むのもさすがにやりすぎだし、喜多方直通をあきらめてすべて会津若松止まりとするのも片手落ち感が否めない。だからといってリバティを蓄電池車化するのに加え、交直対応車にするのも明らかに過剰だ。車両費も保守費も、全線直流の東武からしたらメリットが考えられない。

 

 

 空想論とは言え、うまくいかないなあ。残念。