自転車旅CAFE

自転車旅を中心とした紀行文、紀行小説

平均時速とか、20キロとか

 ずいぶん久しぶりにのぐちやすお氏の本を手にした。

 氏の本はずいぶん読んだものだ。ノウハウそのものもそうだけど、それよりも読んでいると勝手に想像がふくらんで、まるで旅に出ているような錯覚に陥るのである。妄想と言っていい。目から入ってくる文字が10倍にも15倍にもなって自分勝手な旅が始まる。

 ノウハウ本でありながら勝手に空想旅行が始まってしまうという意味では、鉄道の種村直樹氏の著書もそうかもしれない(鉄道旅行のルポ本ではなく、鉄道旅行術という本)。



 久しぶりにお目にかかったのぐち氏は、相変わらず自転車に乗っていてうれしかった。とにかく自転車に乗っていれば楽しいんだっていう雰囲気が変わらず伝わってきた。ちょっとだけ若かったころに帰った気になった。

 でも新しく見た氏の本であちらこちらで見かけたのが時速20キロのキーワードだった。距離がわかれば自転車なら1時間で楽に20キロ走れるのだ、そういった記述だ。サイクリングの時間の計算や、時間から逆算した目的地の設定や、そんな話題につながっていくのだけど、ちょっと待って。

 僕はサイクリングを平均時速20キロで走ったことなんてないよ。


 氏は乗鞍のマウンテンサイクリングにエリートクラスで出てしまう(確かそんな伝聞)ような方で、アスリート的自転車乗りとして見てもかなり高い位置にいるのは間違いない。

 だったら平均20キロなんてちょちょいと、なのかもしれないけど。


 僕はたいてい平均10キロから12キロくらい、帰ってログを見たらひと桁でしたって日もある。

 食事や休憩の時間も含めてだけど、輪行でのサイクリングが中心の僕としては、帰りの列車の時間と計算したりするのに休む時間だって含めたほうが都合がいい。まあそんなこともあるけれど、たいてい平均10キロから12キロ程度だ。

 だって平均20キロって、メーター読みの巡行で25キロかそれ以上出ている計算だよ。

 本が平均20キロは計算できるものっていう前提で書かれているかと思うとなんだか自分とは全然縁遠くなってしまったようで、確か最後まで読まずに本を閉じたような記憶がある。


 僕も瞬間的にであればそのくらいのスピードで走っていることもあるかもしれない。でも一日のうちでどれくらいだろう。そういうときって周囲も見ていないし、自転車で先に進んでいるだけという感じ。もちろん疲れてしまうのもあるし、そんなスピードを長い時間、ましてや一日維持するなんて無理。残念だけど無理。平均時速など気にしないで、気になるようなものが目に留まれば自転車を止めて見てみようってなるのがつね。だいたいそういうときは速度のことをもう忘れているしね。


 ほら、道端でガチャガチャなんか並んでいたら、どうしたって足を止めちゃうでしょ?