自転車旅CAFE

自転車旅を中心とした紀行文、紀行小説

洋食屋

 外食をするとけっこうな頻度で洋食屋を選んでる。たいして値の張らない町の洋食屋である。近所でも旅先でも洋食が食べたいってなれば洋食屋を探す。その地に食べるべき名物があったとしても。どこであろうとカツ丼を選ぶ蛭子さんみたいだ。
 ハンバーグ、オムライス、ナポリタンあたりが定番で、ビーフシチューなんて高級メニューだ。たいていはどこもメニューが豊富なので、定番と決めてかかることもあるし、チキンソテーやポークチャップみたいに変化球をまじえたりもする。高級メニューだっていいよね。
 とっても幸せな気分になる。どれを選んでも。たぶん根っから好きなんだと思う。

 

 子供の頃はどちらかというと貧しい家庭だった。旅行はおろか外食さえほとんど記憶がない。でもハンバーグやポークソテーを食べたことはあった。母親が作ってくれたから。洋食屋にあるようなメニューを日々の食事に織り交ぜてくれてたのだきっと。だから名前に対する認識はそれなりにあった。
 意識して洋食屋の洋食を食べたのっていつ頃だろう。それはもう衝撃だった。母親が作ってたものとは全く違ってた。心底思った。本当のハンバーグってこういうものだったの? ポークジンジャーって母親の生姜焼きとは別物だね、ビーフシチューってすごいわ──。
 でも最近、洋食屋のハンバーグが母親のハンバーグと同じじゃね? って思うようになった。味も、こねも、ソースだっておよぶわけもないのに、どこか繋がるところがあるんじゃないかってね。ポークソテーも生姜焼きも。不思議とね。
 母親が死んでもう何年たったか忘れちゃった。もうすぐ三十年? ハンバーグの味も忘れちゃったのに。

 

 今日も洋食屋に寄ってきた。洋食いいね。

 

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