自転車旅CAFE

自転車旅を中心とした紀行文、紀行小説

便利さの享受とコーヒー

 今や、何をするにも便利である。

 サイクリングに出かけるにしても、ツーリングマップルを見ておおよその計画を立てて必要なページをコピーしていたものが、ネットのサービスでルートを引いてそれをGPSマップに入れて持ち出すことができるようになった。出かけてもよほどの場所でない限りコンビニがあって、必要なものは手に入る。おかげで荷物だって減らすことができた。道路は整備され、日本国内の道路は9割が舗装されているから、ロードバイクで全国をサイクリングすることができるようになった。何かあっても携帯電話がどこでもつながる。もちろんつながらない山のなかや入り組んだ海岸線はあるけれど、10キロも走れば確実に電波をキャッチできる。

 昔はこうだったと懐かしんだり、不便さは楽しさにもつながるなどと言ったりするつもりもないけれど、たとえば僕にしてみれば5年前は、携帯電話は今から思えばたいした情報さえ収集できないガラケータイだったし(しかもWEB接続なんて使ってなかった)、地図は紙に印刷し、ナビ代わりに距離と交差点や道路の番号と右左折を記した小さなメモをステムに貼っていた。

 ──それがわずか5年前だよ。

 

 今はGPSマップが手放せないし、紙の地図を持って走ることはきわめて少なくなった。スマートフォンの電池が少なくなると不安でしょうがない。

 でも特にGPSマップのおかげで、これまでのツーリングマップルじゃ見つけられなかった、入っていこうと思わなかった道に入っていけるようになった。町の小径なんかがそう。この先たぶん、GPSマップを使う旅は変わらないだろうと思う。

 

 

 そういえば、若いころの旅ではインスタントコーヒーを小さな壜に移し、スプーンと一緒にバッグに入れていた。

 たぶん、朝からコーヒーが飲みたかったからだと思う。民宿や旅館、ユースホステルに泊まって、お湯はあるのだけどその横にあるのは大きな急須と湯飲み。お茶しか飲むことができないから、インスタントコーヒーを持ち歩いておけば朝からコーヒーが飲める。お湯をもらって湯飲みで飲んでいたのだろう。

 

 コーヒーを飲みたくなっても、かつては喫茶店かファミレスか、マクドナルドやロッテリアに入るしかなかった。喫茶店やファミレスに入ると休憩は30分単位になるから、行程に余裕がないと無理だ。マクドナルドのようなファストフードショツプは、今でもそうだけど、たくさんあるには違いないのに自分の走るルート上とか、必要なとき必要なところに現れてはくれない。ドトールのようなコーヒーショップはまだまだ少なかったし、スターバックスなんかは僕の印象ではつい最近だ。

 でもコンビニでドリップコーヒーが手軽に飲めるようになった今、そんなことなんてすっかり忘れてしまってたよ。コーヒーを飲むのも便利になったなあ。