三浦・三崎・城ヶ島(Feb-2018)
冬である。だから三浦。寒いから。
毎年毎年そういう発想で三浦へ出かけるのだけど、この冬は初。どうも最近、三浦半島は混んでるしなあという印象を持ってしまっているのかもしれない。それは、自転車も、車も、人も。
そんな印象もあったんで、今日はそもそも三浦半島へ出かけようとは思っていなかった。ガーミンに入れてきた地図は房総だった。鹿野山やマザー牧場、海岸線へ出て東京湾大観音や富津公園をまわるようなルートだった。
そうと決まっていればさっさと出かければいいものを、じっさいに家を出たのはもう8時半だった。車に自転車を積み、もうすっかり活動の始まった街々を抜けて首都高へ入った。湾岸線の浮島へ向かい、そこからはアクアラインで一気に千葉県へ向かう。そのための避けるべく渋滞情報を電光板からインプットする。──と見ていると、渋滞箇所はひとつふたつどころじゃない、それは細かいものから大掛かりなものまで、各方面に発生している。明らかだ。明らかに出遅れたのだ。いつまでも動かずにいるとこうなる。
そして今日のサイクリングを決定づけた渋滞が、「湾岸環八から海ほたるまで」渋滞。海ほたるまでの所要時間が60分とあった。
「アクアライン、だめか……」
僕は都心環状線への合流のノロノロのなかで、そうわざわざ口に出した。
がっかりして口をついたというのもあるし、現実を冷静に見きわめていたせいでもあった。
いま仮に、その60分を甘んじて受け入れ、房総半島に向かったとしても、問題は帰りだ。アクアラインは朝の下りよりも夕方の上りのほうが渋滞が際立つ。逃げ道も千葉市内へ大きく迂回するくらいしかない場所だけに──しかも、その道だって渋滞が避けられない──、アクアラインへの渋滞は僕の想像のレベルメーターを振り切らせてしまった。
選択できる、かつ、暖かい地方から導き出された、というほどたいそうなものじゃないけど、首都高に乗っていて選択可能な選択肢は三浦半島しか思いつかなかった。
(本日のマップ)
(GPSログ)
渋滞は、アクアラインだけじゃなかった。どこも全般的に混雑していた。出発時間が遅かった行程を少しでも取り戻そうと、首都高から横浜横須賀道路につないだ。三浦半島の先端へ向かうためさらに三浦縦貫道へ。通称横々道路から何度かのノロノロにつかまり、三浦縦貫道で2キロの渋滞、それを出た国道134号では僕が折れようとする荒崎入口の交差点まで、渋滞は延々と続いた。
◆
荒崎公園は静かでいい。駐車場が満車になっていることもまずないのでは。三浦半島のなかでも人があまり足を向ける場所じゃない。大半は釣り人か。日曜日で漁船が陸に揚げられた港からは、釣り船が出かけていく。そういう場所だが、僕がついた11時過ぎの時点ではもう出入りもなく、ひっそりしていた。道路の行き止まり、荒崎公園に車を入れる。駐車場代として千円取られた。周辺でも高いほうだと思う。観光客がここまで来ないのは、これも効いているんじゃないだろうか。
荒崎の、ちいさな、静かな沿岸道路から走りだす。
ルートは、急に方針を変えてやってきた場所だから考えもない。走り慣れた道を選んでいく。荒崎から林、衣笠で内陸を越え、東岸の久里浜へ。海辺へ出ると金谷へ向かう東京湾フェリーがちょうど出て行った。船っていい。旅に出て行くんだっていうカラーを強く感じる。自分が乗らなくったって、出て行くそれを見ているだけで気分が盛り上がってくる。
久里浜の火力発電所を過ぎて、トンネルを抜けると野比海岸。ここの飛び込んでくる光景が好きだ。わずか数キロだけど、ここはいい。野比の交差点で国道134号に合流するまで。
朝からそこかしこで遭遇した渋滞は、国道134号にもおよんでいた。
野比から長沢、津久井浜、三浦海岸のマクドナルドまで渋滞が続いていた。
そこまで来て金田の漁港へ向かう県道215号に入ると、車の隊列からやっと解放された。河津桜が咲いていた。
剣崎の台地への坂を駆け上がり、下る。湾は江奈の入り江。ここもまたひっそりとした入り江だ。今日は漁がない船が岸に揚げられている。磯の波打ち際ぎりぎりまで道が下り、潮の香りが鼻に届いた。
県道の毘沙門トンネルには向かわず、そのまま旧道の毘沙門坂を上っていった。
急な坂でどんどん高度を稼ぐと、周囲には大根畑、キャベツ畑が広がり、遠くに風力発電の風車と、城ヶ島と、霞みの向こうに伊豆大島が見えた。
京急バスが向こうから坂を下ってきた。三崎のバスはむかしから、県道215号の旧道であるこの道を走っている。場所によってはすれ違いも困難なこの道に、バス路線の変わらない日常がある。
おなかが空いた。城ヶ島へ渡ろう。なにか食べよう。
大根畑、キャベツ畑のあいだを一気に下る。
できるだけ国道134号を使わないように、走る。でもそう言っても国道134号を走らずに抜けられる箇所が少ない。路地みちを駆使しながら、しかしながら最終的に合流した国道は、すでに数珠つなぎだった。
三崎口の駅には、いつ着けるのだろう──。
バス停で待つ乗客を乗せるため、脇に寄せたバスがなかなか本線に復帰できないでいる。
荒崎の海岸に出ると、やっぱり静かで、ひと気がなくて、どこかで扉でもくぐったみたいに別の空間のようだった。もうすぐ日が沈むんだな、と実感させる西の海だった。