自転車旅CAFE

自転車旅を中心とした紀行文、紀行小説

冬とロマンスとカツオと旅と

 冬が来た。冬はいい。静かでいて華やかな季節だから。夏のように賑やかで開放的で爆発的なエネルギーはともするとやかましく思えるけど、冬の質素で清楚で、そのうえにある華麗さははかなさをともなった優雅。空気が澄み、輝くものが輝き、目に届くすべての色や光が洗練されている。混じり気がない。枯山水のように静寂の内から心に響く波動を伝えてくる。そんな冬が来た。
 だから僕は東京駅で電車を降り、イルミネーションの光がまばゆい丸の内仲通りを歩いた。橙黄色とうこうしょくの彩りはぬくもりを感じる。LEDの発達でブルーやホワイトの派手で直感的で直線的な演出が多くなったなか、電球に近いこの色は暖かい。冷たい空気の中、目に伝わるぬくもりがロマンスをはぐくむ。たくさんの恋人たちがすれ違った。冬のロマンスは流されてなくていい。急いでなくていい。うるさくなくていい。白い息の笑顔がみな美しい。
 今日、ふたつのロマンスに触れた。実りを迎えた恋と生まれたての恋。後者は、消えてしまいそうなもろさを一片に持ちつつも、前途が洋々と、どこまでも抜ける冬の青空みたいだった。高層ビルからどこまでも見通せる夜景のようだった。ロマンスは、少しだけきゅっとなる新鮮な気持を覚えさせる。

 

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 自転車のフォロワーさんたちが企画した忘年会。イルミネーションから何度か迷いながら店に着いた。土佐料理、銀座・四万十川。わら焼きの分厚いカツオが香ばしく、なんとも美味いのだった。過ぎる時間と尽きぬ話に、また旅をしたいって思った。

 

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 お誘いいただき本当にありがとうございました。とても楽しい時間を過ごしました。