自転車旅CAFE

自転車旅を中心とした紀行文、紀行小説

もう18きっぷの季節

 もう、というのは別に年を取ったから月日の経過が早くって、とかそんなことを言うんじゃなくて、ただ単に夏の18きっぷの計画をひとつも考えずに発売の時期を迎えてしまった、ということ。

 梅雨に入ってからも──それなりにムシムシする日はあるけれど──極端に「暑っ!」って思う日はないし、夏の実感がわかなかったのかな。

 夏は暑いけど、荷物が少なくていい。着るものが荷物を占める範囲って大きい。それがない。暑いのは大変だけど、荷物のことを考えなくていいから好きかも。荷物が多くなることもそうだけど、荷物が多くなったときに、それをどうするか考えるのが面倒だったりね。けっこう神経質に悩んじゃうんだよね、着るものをどうするか、収納をどうするか。それも、週末に向けて何日もかけて。

 荷物が少ないってことは、輪行にももってこいってこと、とも言えるよ僕の場合。

 だから、急がなきゃ。急いで、考えなきゃ。



 青い空──冬の吸い込まれそうに澄んだ奥深い空とは違って、平板な、奥行きのないペンキ画のような青空。そこに真っ白な、分厚いむくむくとした雲が浮かぶ。田んぼは伸び盛りの稲が緑のじゅうたんを作る。どんなに暑くて蒸した日でも、稲のじゅうたんの上を撫でてきた風って涼しく感じるんだよね。何でだろう。木々は梅雨のひと雨ごとに葉が洗われて緑が色濃くなって、舞台はそろう。

 つい夕方まで走ってしまう。

 実はもう夏至も過ぎて、少しずつ──じつにほんの少しだけど──昼は短くなってきて、夕方を迎える。夕暮れは、なんでだろうこの時期の夕暮れがいい。秋とも冬とも違う。夏に近づこうとする春の夕暮れとも違う、夏のオレンジ。ひぐらしとか、そんな蝉の声があるからかな。それとも潜在意識下で子供のころの夏休みでも思い出しているのかな。

 今年の夏も、自転車に乗っていろんな風景を探しに行こう。


 図書館で、借りてきた。風景の写真集を見るのって、いいね。