自転車旅CAFE

自転車旅を中心とした紀行文、紀行小説

富士山スカイライン

 富士山スカイラインという名は愛称であり通称、正式には表富士周遊道路というのだけど、どうしたって通称のほうが通りがいいし、この道路の構成から言っても「富士山スカイライン」であるほうがいいように思う。

 それはこの道にふたつの区間があるから。

 ひとつは周遊区間でひとつは登山区間という。

 だから表富士周遊道路の周遊区間っていうとどうも語呂として乗りにくいし、表富士周遊道路の登山区間っていうと周遊が妙に浮いた語感になってしまう。少なくとも僕の手持ちの道路地図やツーリングマップルは富士山スカイラインと記載しているし、富士登山オフィシャルサイトや静岡県の交通基盤部道路局でも富士山スカイラインという言葉を使っているから、もうこちらが公称といってもいいように思う。


 この道に僕が魅せられているのは、かつてBS日テレで放送していたTV番組、『峠[TOUGE]』のせいだ。5分間の、全国の峠道・山坂道の紹介番組にこの富士山スカイラインが登場した。

TOYOTA 86 テレビ番組『 峠[TOUGE] 』 volume 035


 しかもこの番組で扱ったのは、周遊区間のほうだ。


 自転車乗りにも有名で、ことにヒルクライムを愛するアスリート系にはもってこいの道路のようだ。しかし自転車乗りからの情報を集めようとして出てくるのは登山区間ばかり。標高2,400メートルまでを駆け上がる山坂道は彼らにとってこのうえなきごちそうなのだ。

 しかしながら周遊区間の情報は少ない。出てくる内容は登山区間へ向かうためのアプローチ情報ばかりだ。より調べていくと、これは自転車乗りだけじゃなくモーターサイクルにしても四輪にしても、みな同様だった。つまり誰にとっても、周遊区間はロックコンサートでの前座であり、交接での前戯にすぎない。



 あるいは僕向きではないのかもしれない。

 おそらく眺望は全般的によくない。森林のなかをゆく道路は、遠くの風景など望めないに違いない。眺望があるのは登山区間の標高2千メートル前後を超えたその上だ。周遊区間に期待できる箇所はおそらく、ない。

 じゃあほかに何か見どころはあるのかというと、ない。

 途中にパーキングが二箇所あるが、売店などがそろっているのはうち一箇所で、それ以外はコンビニも商店も、そして自販機すらない。

 とことん、道だけである。


 映像から繰り出される道路の曲線や風景への溶け込みに魅了され、僕はルートを引いた。でもその映像の美しさだって、高い位置からのカメラワークは自転車目線じゃ感じられない。

 それでもいいのだ。映像で魅了された道の、その続くアスファルトだけを感じるために走るサイクリングがあってもいい。


 僕はまだ実走したことがない、富士山スカイライン

 静岡県。そう遠くはない。近々、僕もぜひ。



地図

──登山区間は、オプショナルプラン──


ルート(GPSies


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(みどころ・立ち寄りどころ)


富士山スカイライン:富士のすそ野、静岡県側に造られた、高速ワインディングを中心にした山岳路。またすそ野を巻く周遊区間から分かれ、五合目まで向かう登山区間もある。