飯士山と分断県道と林道
新潟県南魚沼市と湯沢町にかかるように
そのころスキーをやっていた僕は、地図を見て、この舞子と岩原の両スキー場が飯士山の山頂付近までゲレンデを持っていることを知る。双方が手を伸ばしたら届きそうだ。その至近さから、
「このふたつのスキー場を山頂でつないだら、山をまたいだ広大なスキーエリアになるじゃないか」
そう思った。山頂から両方向へのゲレンデでなくても、連絡コースでもいいと思った。山頂へ一気に上がれるゴンドラを両スキー場とも有していることもあって、本気でそうなってくれないかと考えた。実現すれば巨大なスキー場がいくつもしのぎを削る湯沢・石打地区でトップランクに躍り出る、じっさいそれほどの規模だ。このことを僕は当時作っていたホームページに上げて語ったほどだった(ブログなんてものはなかった……)。もちろん、以降の経済状況からみれば、僕の頭のなかもバブルでお花畑であった。
そんな飯士山周辺の地図をまじまじ見ることがあった。先月初め、魚沼スカイラインへ出かけたときだ。この南魚沼地区の道の情報を集めようと、地図を見ていたのだ。
飯士山なんてたまたま見ていただけだ。だって頭のなかで、スキー場さえつながっていないんだからこの山は越えられない、と思い込んでいたのだから。
そのとき、岩原スキー場から飯士山に上っていく県道があるのを目にする。「361」と数字が振ってあった。スキー場のゲレンデの
県361の線がおぼろげに、なくなってしまう先に湯沢町と南魚沼市との町界を表す線がある。それはまさに飯士山から続く尾根線でもある。
そして尾根線の向こう側に、同じ県道をあらわす色の道を見つけた。
「361」とある。
見ると舞子スノーリゾートのふもとから延びている。同じ県道である。なんと分断県道だったのか──。
◆
「この道、通り抜けられないだろうか」
僕は若いころに思い描いた一大スキーリゾート構想をまるでなぞるように、この通り抜けサイクリングができないものかと思案し始めた。
しかしあまりにも情報が少なかった。県道361号、万条新田越後中里停車場線──。
ルートだけでも引けないものかと、いつも使っているGPSiesを開いた。
GPSiesはベースに見せる地図をいくつか選択できるのだけど、たまたまそのときOSM(OpenStreetMap)が開いていた。
──つながってる?
つながっていた。OSMでは県道361号が、飯士山山頂付近を経由して、ちょうど舞子スノーリゾートと岩原スキー場をつなぐように、つながっていた。
僕は期待半分でルートを引いてみた。
──引けた。
(県道361号飯士山越えルート)
でもこれはぬかよろこびにすぎなかった。
僕はこういった貫通不穏なルートの場合、かならずいくつかの手段で確認するようにしている。まず国土地理院地図で見た。だめ、つながっていない。ツーリングマップルを開くと、県道ではない道で別につながっているように見え、なんか微妙。それからグーグルマップ。つながってる──。つながってるの? 本当に?
半信半疑でストリートビューの"ペグマン"を掴む。しかしストリートビューの線はつながらなかった。その終端にペグマンを置いてみた。こうであった。
まあそんなものだ。だいたいOSMなんて
にしても、グーグルマップがつながっているというのが気になる。そしてじっさいその道は、上記ストリートビューのショットでいう行き止まりになった舗装路ではなく、左に折れているダートのダブルトラックのほうである。
この道はどんな道なのだろう──。
あきらめはしたものの、気になって仕方がない。
それが県道でなかろうと、僕のかつての一大スキーリゾート構想をまるで具現化するような、一本の道筋に見えて仕方がないのだ。
◆
あきらめた僕にもう一本の道が目に入った。
この県道361号の少し東、同じように飯士山から続く尾根線を越えている道路がある。
国土地理院の地図でも白い線でつながっていた。グーグルマップもつながっている。そしてストリートビューも線が貫通している。撮影車が走り、ストリートビューが完成しているってことだ。
こちらも情報は多くなかった。しかしながら道路の実態はわかった。
塩沢町側の集落「一之沢」と湯沢町側の集落「滝之又」を合わせただけの林道名称。ルートを引いてみた。
もちろん、引けた。このとおり。
湯沢町、岩原スキー場の先、
──沢口橋?
こないだ、通ったじゃん。
これか。この道か。
僕はこの道を見ている。魚沼スカイラインに出かけた今月初めに。ああ、道が続いているな、と思った。どこかの集落まで行ってぷつりと切れるのだろう、そう思いながら見ていた。つながっていたのか。
これは興味が湧く。
週末、僕は湯沢へ行く。自転車を持って、偶然にも。妻が友人たちと南魚沼グルメライドというイベントに出るそうなのだ。
僕は当然ながら出ない(ここで何度も書いているとおり、僕はイベントにはまったく関心がないので)。ただ残念ながら、彼女らでは車の屋根に自転車を積むことができない。そこで
しかし僕は自由だ。僕も自転車を持って、そして湯沢に行き、あとは自由なのだ。
やっぱり、行くならこの道なんじゃないか。