自転車旅CAFE

自転車旅を中心とした紀行文、紀行小説

自転車で挨拶するということ

 自転車に乗って、自転車とすれ違うと、挨拶をすることがある。僕はたいてい会釈しこんにちはというか、手を挙げる。極度の人見知りの僕がこういうことをするのだから、知らないうちに体にしみついているのかもしれない。
 林道なんか行くと、自転車はおろか、車もほとんど走らないし人も通らない。そういうところで登山スタイルの人と出会うと、挨拶する。こんにちは、そうすると向こうも自然とこんにちはという。
 東北以北はオートバイと挨拶になることも多い。なぜ東北以北? 不思議なもので。旅情が色濃くなって、旅の仲間意識が生まれるのかな。彼らとは声が届かないから、多くはハンズアップ、サムズアップ。北海道になるとピースサインも。

 

 この前18きっぷを使って安曇野へ行った。仁科三湖(青木湖、中綱湖、木崎湖)や安曇野の田園の道をさらさらっと走ってみた。実は初めてこの地を訪れた。驚いたのは自転車がけっこう走っていたことだ。確かにいいところだし人気はありそうだし、あずみのセンチュリーなんて募集開始後すぐにいっぱいになったり、申込数が多すぎて抽選(?)になるって聞くし、それほどの場所だから不思議じゃないんだけど、でも僕のところからでもそうだけど、都心からじゃかなり遠いのにね。みんなのエネルギーに驚いた。すべてがすべて、地元の人とは思えなかったから。
 そんなわけで僕はけっこう多くの自転車とすれ違い、そして抜かれていった。
 そのたびに挨拶をする。こんにちはといい会釈する。でも、ここは挨拶をしない土地だった。ほとんどの人が返さず、目線すら送られることもなかった。
 別にさびしいってことはないし、無視されたって騒ぐような僕でもない。そういうところなんだってわかればそれでいいんだ。

 

 例えば荒川サイクリングロード。ここはもう挨拶なんてない。不文律でそうなっているんじゃないかってくらい。もっともこれだけの数の自転車が行き交っていれば、いちいち挨拶なんてしてたらキリがないもんね。江戸川も下流域はそんな感じ。逆に上流域は会釈ぐらいするっぽい。谷中湖もしないよね。谷中湖は自転車がたくさんいるだけじゃなく、周回路であるがゆえ同じ人と何度もすれ違うからわかるような気もする。多摩川は知らない。走ったことがないんだ。
 こういうの、決まりがあればいいのにね。悩まなくて助かるよ。首都圏のサイクリングロードは挨拶禁止、安曇野も同様、東北はバイク乗りともしましょう、とか。
 べつに空振りすることはいいんだけど、挨拶したがために睨まれたりうるせぇって顔されたりされるとつらい。荒川で高速で巡航していた集団や個人にそうやって見られたことが何度かあって、けっこうトラウマ。今回の安曇野でも明らかにむっとされたり。
 すっかり縮こまって挨拶封印で走っていたところへ、反対側を軽快に上ってくるキャノンデールさんにハンズアップされ、何の準備もしていなかったゆえ返せかなったので、こういうときに悪かったなあとまた気が落ち込んだり。
 そういうのがあるんで、地域性とかあるならその場所場所でいいんで、決めてあるとうれしいです。