自転車旅CAFE

自転車旅を中心とした紀行文、紀行小説

高所

 なにがしかの強制的な事態じゃない限りみずから望んで行くことは基本的にない。高所。高ければ必ず怖いかというとそうでもなくて、まれに大丈夫なときがある。逆に低ければ平気かというとこれもまた同じで、そうでもないのに恐ろしくて足が出なくなることがある。状況によることはあれ、いずれにしたって怖いものもは怖い。そして今回ひとつわかったことがあった。水の上を通過するときは怖い。利根川にかかる武蔵大橋(利根大堰)の歩道を自転車で渡ると最大クラスの恐怖なんだけど、ここを二回目に渡ったときに意外と平気で、初めこれは勘違いの恐怖だったかあるいは慣れだと思った。でもそれはまだ橋の導入部、日本一流域面積の広い利根川の長い長い河川敷を通過しているときだったからだ。手前から見ているときと真上に来たときではまったく違うことを知る。利根川の悠々たる流れの上に出た途端進めなくなってしまった。そのときのことを今思い出した。今回は自転車じゃない。自分の足で歩く。知ってて行ったわけじゃなく知らずに行ったらこんなことになった。なんだここは観光マップに載せるような場所へ行くのにこんなところを歩かせるのかあ無理だろうよこれ引き返す人絶対いるぞなどと口走りながら、でも声は水の轟音にかき消される。進めない、恐ろしい。どうやら自転車とか、自分の足とか、あまり関係ないみたい。
 でも行ってよかった。

 

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