自転車旅CAFE

自転車旅を中心とした紀行文、紀行小説

GPSiesの終息

 ルートラボが閉鎖するニュースが話題になった。来年の3月をもってサービスを終了するという。

 

 かつて、マイクロソフトSilverlightの更新が止まり、それはルートラボの存続そのものだった。僕もルートラボでルートプランニングしていたからそれはもう痛手で、Internet Explorerを使えばSilverlightが動くとか、FirefoxをバージョンアップしなければSilverlightを動作させられるとか、いろいろな小手先の努力で使い続けてみた。こんな事長くは続けられないよなと思いつつ、ルートを作るにはそうするほかなかった。と同時に、「ルートラボはもうだめかもしれないな」と感じるようになってもいた。Silverlightが使えないなら、使わない方法でのサービス提供に変えるしかないわけだけど、そのときに試作されたJavascript版が、それはもう使うには値しない程度のもので、これ一本に絞られたとしたらとてもルート作成はできないし、アップロードもできないんじゃ(アップロード機能はなかった)ログ管理にも使いようがないなと実感した。だから小手先の努力を続けながらも、並行してルートプランニングできるサービスを探し始めていた。
 GPSiesというサービスが目に留まった。
 そして僕はこれを使い始めた。はじめはとっつきにくかった。それはそうだろうと思う。ルート作成サービスをいくつか使いながらのうえであればまだしも、ルートラボしか使ったことがなかったわけだから、ルートラボ以外のあらゆるルート作成は使いにくいのだ、当たり前である。それでも僕は使い始めた。するとやはり慣れというのはあるもので、やがてこれでルートを引くことができるようになった。ルートラボではできなかった、ウェイポイントを入れることや、サイクリングロードにルートを引くこともできることが少しずつわかってきた。これは使い続けられるかもしれないなと思ったころ、記事も書いた。見れば、もう三年近くも前のことだ。

 

nonsugarcafe.hatenablog.com

 

 のちに、ルートラボJavascript版で帰ってきた。僕に使い続けることをあきらめさせたあのプロトタイプではなかった。Silverlight版とまったく同じインターフェース、同じ機能を持ち合わせていた。ルートを引くレスポンスもSilverlightと変わらなかったし、ファイルアップロードもできた。完全に生き返ったと思った。そしてこれに投入した改修コストもかなりのものじゃないかと想像した。ヤフーのルートラボへの本気を見た。
 だからサービス終了のニュースを見たとき、意外だった。これだけ力を込めてサービス存続してきたものを、どこかにサービスを売却するでもなく一方的な終了となったことに。

 

 

 僕はこのニュースを知ったとき、そうたいした問題にはしなかった。僕自身は新たなルートラボJavascript版が動き始めたとき、すでにGPSiesのヘヴィ・ユーザになっていた。ルートラボに優位性のある機能や使い勝手もあったけど、GPSiesのそれのほうが上回っていたから。GPSiesを使っていれば事足りるようになっていたし、戻ってくる必要はなかった。GPSiesサーバの調子が悪いときにルートラボでルートを引いたり、ログの双方での評価を知りたくてそれぞれにアップロードをすることもあったけれど、ルートラボで作成したGPXは最終的にGPSiesにインポートしたし、アップロードした結果を管理したり他と見比べたりするのはGPSiesのほうだった。それだけ僕にとって使い慣れた存在になっていた。

 

 だからといって、ルートラボを愛用している人が嘆くようすを見て、それに対して「GPSiesを使えばいいじゃん」ということはしなかった。あるいは「RIDE with GPSがかなり使い勝手いいよ」とか、「STRAVAだってルート作成機能があるっぽいよ」なんて進言をするつもりもなかった。だってルートラボ愛用者は「ルートラボだから使いやすさがある」から使っているんだ。多くの人は他のサービスでもルート作成できることを知っているし、可能な範囲で触ってみたりもしたことがあるはず。ルートラボを愛用する人が、これを使い続けてきたのは、ルートラボの機能やインターフェースに意味と魅力があるわけだから。そうである以上、余計な口出しはおせっかいや大きなお世話にすぎない。
 僕はニュースののち流れるツイートを静観していた。はじめは誰もが嘆きのツイートばかりを投稿した。やがてみな代わりになるサービスを探し始める。なかなか自分に適したサービスを見つけることができない。それもつぶさに見ることができた。それはそうだと思う。ルートラボに取って代われるのはルートラボしかないのだから。タカラレーベンである。しかしタカラレーベンと違うのは、今のところ「なければつくるさ、ルートラボをね。それが、ルートラボだ!」と断じるネベル教授が現れないことだ。
 ツイートから、妥協のうえの落着先がいろいろ見えてくる。そりゃ妥協だよね、どこに移ろうが。僕だってGPSiesを使い始めたとき、妥協ばかりだった。試行錯誤が必要だった。その結果、ルートラボでやってきたことの代替手法を覚え、ルートラボにない機能も使い、ルートプランニングはGPSiesだけでできるようになった。だから妥協とはいえ、自分に適したものを見つけたあとは、だれもが試行錯誤のうえ自分に適した使い方を見つけ出していくんだと思う。
 このツイートがおおよそ収束した先週、GPSiesからメールが届いた。

 

 いままで一度もメールなど来たことがなかった。そして内容はすべて英語だった。英語はもちろん、他国語などひとつもわからない僕には書かれていることはひとつも理解できなかった。ただ、いままで来たことがないメールが急に来るなど、何らかのサービス変更を予感させるものだった。有料化とか、あるいはサービス廃止とか。
 翻訳サービスにこのメール全文を読ませた。すると、どうやらAllTrailsというサービスに統合されるらしいことがわかった。もともとドイツ語で作られているらしいサイトから彼らはユーザーに英語でメールを出し、これを僕は翻訳ツールにかける。なかなか読みづらい。翻訳されたメールの本文からではそれが買収されたのか吸収合併なのか譲渡なのかよくわからなかったが、そんなことはどうでもいい。内容は、GPSiesがAllTrailsに合流する、そういうことだった。
 これまでルートラボのニュースを対岸の火事、どこか他人事ととらえていたフシがあったけど、今度はまったく同様の事態が僕自身に降りかかってきた。まさかね、そう思う間もないほど。

 

 ルートラボと違うのは、GPSiesのサービスが終了する、とは明示されていないことだ。ただし合流後サービスが存続するとも書かれていない。
 やれやれ。

 

 そして今日、GPSiesがツイートを投げていた。
 彼ら、ふだんツイッターは使わないんだろう。まったくわからないドイツ語で、おそらく「フェイスブックを見てくれ」という意図で貼られたのだろう、リンクがあった。僕はこれをたぐり、そこに書かれた本文を翻訳サービスにかけた。

 

- GPSiesウェブサイト、ルートプランナーは計画していません

 

  翻訳の結果とはいえ、これはサービス終了の宣言と見てよさそうだ。そういうことだね。さあ切り替え、切り替え。僕も代わりのサービスを探し始めようか。

 

※※※

 

  これまで、僕の書いた記事に、ルートやその日のログをGPSiesにリンクしているものが多くあります。GPSiesに保存されているものはAllTrailsへ移行できるようではありますが、アカウントの移行すらよくわかっていない僕のこと、うまくいくかもわかりません。それがうまくできたとしても、きっとリンクのURLは変えなきゃならないことでしょう。つまり僕の記事からルートやログのリンク切れが起きる可能性があります。残念ですがすべてを追いかけて修正することはきっとできないでしょう。その点は何とぞご理解のうえご了承いただけると幸いです。またその記事のコメントにでも「ルートが見られない」と書いていただければ、それに気づいて他のサービスに載せたルートやログを提供できるかもしれません。できるだけそうしていきたいとは思っています。何とぞ、よろしくお願いいたします。