自転車旅CAFE

自転車旅を中心とした紀行文、紀行小説

スマートフォンを持って旅をすること

 今や携帯電話を持って歩くことは当たり前になってしまった。特にサイクリングや旅に出ようとするなら絶対的携行品と言える。サイクリング時の持ちものを示したサイトでも必ずそうなってる。

 携帯電話が普及することで公衆電話の数など激減してしまったし、電話帳機能があるがゆえ、主だった連絡先の電話番号を記憶したりメモしたりということもなくなってしまった。もはや自分自身の携帯電話番号さえおぼろげだし。


 連絡も、中心だった電話がやがてメールに変わった。PCのメールと違ってプッシュで届くから相手に対して即時性があるし、電話のように相手が取れない場合に連絡がつかないってこともない。

 そして携帯電話がスマートフォンになったいま、メールすら激減し、LINEであったり、SNSを使った連絡だったり、さま変わりもここまできた。じっさい、LINEやツイッターのDMじゃないと連絡できない人も僕のまわりにいる。電話番号も、メールアドレスも知らないのだ。



 スマートフォンの電源が突然落ちるようになった。

 充電切れだった。

 使い始めて1年半と少し。はじめは充電が一日持たなくなり、やがてバッテリー残量が40%、50%、60%でも電源が突然落ちるようになった。

 バッテリーが消耗したみたい。交換を要する。でも2年したらキャリアの乗り換えも含めて買い替えようと思ってた。もうこの機種はあきらめよう、とこの時点で買い替えてしまうと、そこにのしかかってくるのが24カ月分割の機種代金と契約月以外での解約違約金。残存機種代と違約金の発生を気にして、2年まで頑張ろうと意を決したときに、まだ残り2カ月と少しあった。


 使い続けるには予備のバッテリーを持って歩くしかなかった。

 仕事中であれ、旅であれ。

 サイクリングのとき、トップチューブバッグかフロントバッグに忍ばせる。大きいものじゃないけどけっこうな荷物。自転車に乗るときひとつでも持ちものを減らしたいって考えるから、今までなかったものがバッグの一角を占拠することは、他の荷物をやめるかバッグを大きくするしかなかった。大きな変化だった。

 泊まりとなればスマートフォンの充電ケーブルを持ち歩くわけだけど、これと別に予備のバッテリーの充電ケーブルも持ち歩く必要ができた。宿泊先でコンセントの数が足りなくなっちゃいけないからタコ足のタップも持ち歩く。

 なんなんだよこれって、哀しくなった。

 ガラケーのときは充電が数日もったから、一泊二泊程度なら充電コードさえ持ち歩かなかったのにね。



 いよいよ、満を持してスマートフォンを替えた。

 この数カ月をよく耐えた、と自分を褒め称えた。なにしろ最後の一カ月は朝の5時まで充電して、7時半には電源が落ちるほどだったのだから。

 新しいスマートフォンは、ふつうに、充電が減らない。


 サイクリングの準備をする。

 いつものように僕は予備のバッテリーをトップチューブバッグかフロントバッグに入れた。

 新しいスマートフォンは一日であればじゅうぶんにもつ。でも、この数カ月のバッテリーとの戦いから抜けだせなくなってしまった。電源が落ちることがトラウマになっているみたい。

 やれやれ。