自転車旅CAFE

自転車旅を中心とした紀行文、紀行小説

米と水を俯瞰する - 魚沼スカイライン

 やはり出かけたのは夏だった。そのときも夏がいいと思ったに違いない。記録を探すともう5年前の2012年のこと。

 そもそもこの道を目的に出かけたわけじゃなかった。へぎそばを食べに行こうと思ったのだ。それまでは魚沼盆地でばかり食べていたへぎそば、今度は信濃川沿いの十日町盆地でのものを食べたいと思った。そのルートを引こうとツーリングマップルを開いたとき、紫色に塗られたこの道を見つけた。


 魚沼スカイライン──。


 現在は新潟県道560号という。開通当時は有料道路だったそうで、その通称名としてこの名が与えられた。わずか7年で無料開放され、一般県道になったという。どうりで僕の手持ちの地図では古いものでも有料道路の記載がないわけだ。

 魚沼丘陵の尾根上を貫く道で、南は十二峠、北は八箇峠を端とする。

 正直、この道路の用途はよくわからなかった。



 僕はこの道を全線走っていない。かつてそのときは護国観音展望台のすぐ先で通行止めになっていた。もうあと少しの所で八箇峠まで走ることができなかった。それまでの途中の交差点に通行止めの情報は出ていなくて、ここまで来て初めてそれを知る。結果、単純に引き返す以外の選択肢はなかった。

 その日、十日町方面でへぎそばを食べることを目的にしていた僕は、塩沢・六日町側に下りるわけにいかず、戻った最初の交差道路である県道82号が、ここもまた十日町側だけ通行止めだった。六日町側には下れたがそれじゃ意味がない。結局僕はもうひとつ南の県道76号まで戻り、十日町へと向かった。結局ほぼ半分の距離をピストンし、ピークだった魚沼展望台に向かって上り返した。



 魚沼スカイラインは、南側の十二峠から入ると強烈な上りが迎える。センターラインのない道の左右には、「こんな急勾配の土地まで」とため息が出るほど水田が広がっている。青々と伸びた稲が山坂道とアンバランスに目に映る。それが新潟県の特徴、魚沼スカイラインの風景なのかもしれない。

 魚沼展望台に行くと、そこから魚野川に沿った湯沢から石打、塩沢、六日町に至る魚沼の扇状地が見渡せる。それはどこまでも続く水田と、水をたたえた魚野川の眺めだ。

 道は魚沼展望台をほぼ頂点に、そこからは下り基調になり、最後再び上って八箇峠へ着く。

 僕はもう一度、夏に訪れてみたいと思う。

 もちろん冬は道路が上越国際スキー場の一部であり、豪雪地帯の山のなかゆえ通行止めになるが、それ以外の季節なら、稲が力強く伸びた夏から黄金色の穂をつけた秋口がいいかなと思う。

 大地一面が緑のじゅうたんだ。そして大地が水に抱かれているのをまぢかに実感する。


 ルートは八箇峠から六日町に下りるよう引いてみたけれど、十日町に抜けて飯山線ほくほく線輪行してもいい。あるいは日本最大の大河、信濃川に沿って越後川口まで走ってみてもいいかもしれない。八箇峠から十日町へ抜けるには、一度六日町側に下り、国道253号で八箇トンネルをくぐる必要がある。八箇峠の先から分岐するように八箇トンネル西側坑門へ抜ける道があるけれど、これはかつての国道253号で、現在は廃道になっている。多少の荒れ旧道なら入ってしまいたいけれど、藪に埋まった道の残骸は目にすることもできないようだ。残念。

 スカイラインの途中、一切のコンビニ、商店、自販機はないので、食べもの飲みものの準備は怠りなく。


地図

ルート(GPSies