自転車旅CAFE

自転車旅を中心とした紀行文、紀行小説

東山道で白河へ

 白河へ向かっていた。

 福島県の白河だ。

 いにしえにはみちのくの玄関口、東北への入り口の街として今も変わらず各方面の道路が複雑に入り組みあう要衝の街だ。

 栃木県からここへ向かう国道294号は江戸のむかし、陸羽街道(奥州街道)だった道。

 僕はここを何度か、自転車で通ったことがある。車で白河に向かうときにはたいていここを使うので雰囲気はわかっている。そのたびに自転車で走りたいと思う。そしてじっさい自転車で走ってみるとそのよさを実感する。体感する。

 現代の国道規格で舗装され、オレンジ色のセンターラインがしっかり引かれた道であるのに、その道路を包むようすが進むごとに現代から遠ざけていくようだ。芭蕉奥の細道で訪れた場所として伊王野や芦野があり、今では観光資源の施設もあって大型バスも押し寄せる観光スポットになっているけれど、そんな芭蕉の時代をしのぶ観光資源のせいじゃない。歴史に触れ、知るにはいいけれど、むしろ観光施設は現代のハリボテ、セットにすぎない。変化する空気は栃木県最後の大きな集落、芦野を過ぎてからだ。境の明神で栃木・福島県境を越えていく区間、ここにタイムスリップ感がある。道路とその周辺のガードレールなどの類を取り払って、──意識せずに──周囲を感じていればそれはわかると思う。道路以外、江戸のむかしから残っている風景なんじゃないか、と思わせる。そういう風が吹く。

 

 今回、白河へ向かうのに使ったのは、この旧陸羽街道ではなく、県道76号だった。

 この道もまた以前から興味を持っていた道だった。旧陸羽街道の一本東側を通るこのルートは、江戸よりさらに古く、東山道のルートにあたる。奥州関門の白河の関が置かれていたのもこの道とされている。

 旧陸羽街道は栃木県の大田原から芦野に抜けるが、東山道はその南の伊王野から東へそれてしまう。なので旧陸羽街道は使わずに伊王野へ向かった。その道を、車で運転していた。

 

 ──自転車で来よう。ここはひとまず走っておこう。

 

 そう思い至るにじゅうぶんな道だった。陸羽街道同様、何があるわけじゃない、それでも何かが惹きつけてくる。それが伝わってくる道だった。

 

東山道ルート、栃木・福島県道76号)

 さて白河に着いた僕は入り組んで鈎状の道もある複雑な白河市内に車を走らせた。ここへ来た目的は、昼にラーメンを食べたかったからだ。

 白河ラーメンのもっとも有名な、「とら食堂」。そしてこれを取り囲むように、あるいはのれんを分けて増えて存在しているのがいわゆる「とら系」。どこもみなとら食堂の味を継承していておいしいし、僕にとっては白河ラーメンは1、2を争う好みのラーメンなのだ。

 僕が今回行ったのは、とら系ではなく、茶釜系。早速ワンタンメンをいただいた。

 

(茶釜系ラーメンは、茶釜本店へ)

 

 ラーメンを美味しくいただいたあと、白河駅前まで行ってみた。ロータリーを構えた駅前には、タクシーが止まって客を待っていた。

 白河の駅舎は古く、瀟洒でハイカラな作りだ。

 地方の街に来ると、こうやって駅前や駅のなかに立ち寄ってみるのが大好きだ。

 そこには「えきかふぇ」なる、喫茶店があった。

 外にはバイクラックがあって、自転車を止めてえきかふぇへ立ち寄ることができそうだ。

 

 輪行で白河ゴールにするとき、使ってみたいと思う。楽しめてくつろげる場所だった。

 

(えきかふぇ……白河駅舎内にある建物を生かした喫茶店)