自転車旅CAFE

自転車旅を中心とした紀行文、紀行小説

青春18きっぷ

 国鉄時代からの歴史あるこのきっぷはじつにシンプルだ。基本的なルールは日本全国のJR路線の普通列車をその日一日乗り放題で乗れる、というもの。

 

 鉄道旅をする人にとって今やあまりにも有名なきっぷ、僕はこれが登場したころ、じつはほとんど利用しなかった。

 当時は周遊券というきっぷがまだあって、僕にとってこちらのほうが利便性が高かったから。行きたいエリアが決まっていれば、その地域を大きく包含するワイド周遊券で旅ができる。18きっぷの5日(5枚つづり)に比べて場所やエリアによるけれど10日、14日、20日などと長かったし、エリアまでのアプローチやエリア内で急行の自由席に乗ることができた。エリア内では特急の自由席にも乗れた。まだ急行列車も数多く走っていた時代だから、普通列車しか乗れない18きっぷよりも周遊券のほうが便利だった。

 でも周遊券がなくなった今、18きっぷを使う。

 

 18きっぷはそのルールがシンプルなあまり、どうしても欲張りになってしまう。

 日本全国乗れる、ただし一日限りとなれば、もっと多く乗れるんじゃないかとか、もっと遠くまで行けるんじゃないかとか、本来旅のツールであるはずのきっぷが、これを最大限使うことが目的になりがちだ。

 いやいや(──僕はそういう邪心を振り払うために首を横に振る)。

 できるだけたくさん乗ろうと、列車の乗り継ぎをできるだけ効率よくする。できるだけ遠くまで行こうと、俊足で長い距離を走る列車を選択する。そんな計画を立てるほど、途中下車は減り結果的にただ一日列車に乗ってましたって旅になる。それはそれでありだと思うしその良さだって理解しているけど、せっかく通る街をどこか選んで歩いてみたいって思うのもある。僕には。

 

 難しい。

 あくせく元を取ろうというのとは少し違う。元は、首都圏から少し飛び出して往復するだけで取れる。じゅうぶん元は取っているのに、とにかく遠くへ、とにかくたくさんとなってしまうわけだ。

 

 それは今でも。──だから自分のプランニングヘの戒めも込めてここで書く。

 さあ、どこへ行こうか。