自転車旅CAFE

自転車旅を中心とした紀行文、紀行小説

おみやげ

 もともとおみやげを買うなんてしたことがなかった。

 近距離も含めればお出かけはしょっちゅうのことで、他の予定がないなら毎週末立て続けに出かけることだってある。

 だから出かけていること自体が日常というか。

 ひとりで旅に出ることばかりだったから、まずそういう意識を持っていなかったのは事実。それとおみやげの意味が理解できなかったのもひとつ。──たとえばスキーなんかに出かけたとき、仲間がこぞっておみやげを買って帰る(そのために小一時間の時間を必要とする)のを見て、なぜなんだろうと思いつつただじっとみんなが集まるのを待っていたりした。

 

 さて最近、自転車で出かけるときに一緒に走りましょうと声をかけられる機会ができ、そうなれば自ら立てたプランで面白そうなものがあると「一緒に行きませんか」と声をかけるようになった。

 一緒に出かけると、おみやげを買う人もいる。

「家に帰ってから自分でゆっくり食べるから」

 ひとりがそう言った。

 ──なるほど。

 旅行に行ってきましたとばかり、月曜日に会社でおみやげを配る絵が好きになれない僕は、それゆえにおみやげを忌避していたのもあった。でも仕事帰りのスーパーで食後に落ち着いてからつまもうと買うミックスナッツのように、そこで食べたいと思ったものを家に買って帰ったっていいのだ。旅先で買って帰るもの、イコールおみやげという言葉でひとくくりにしてしまうことで、自分で楽しむ機会を逸していた。

 

 なるほどね。