自転車旅CAFE

自転車旅を中心とした紀行文、紀行小説

寒がりシューズカバー

 冬、シューズカバーが手放せない。これを靴の上にかぶせるということは、面倒で大変なばかりだけど、手放せない。仕方がないよ、寒がりなんだから。

 

 そんなわけで冬になれば引っ張り出して使っているシューズカバーがいよいよぼろぼろになってしまった。いや、これってぼろぼろになるよね、どうしたって。靴底やつま先やかかともカバーしているものであるわけで、靴であれば補強がなされているような場所だ。そんなところに布切れ一枚でカバーしようっていうんだから、無理もかかる。そりゃだめだ、と苦笑するしかない。自走や車載で乗っている人ならまだ痛み度合いも少ないだろうけど──それはシューズカバーをつけているとき、イコール、乗っているときだろうから──、僕のように輪行はするわ(しかもかなりの長距離長時間、何度の乗り換えもいとわず)、未舗装や荒れ地には行くわ(乗ってるときも草木に足は当たるし、降りて歩いて押すことも多いし)、シューズカバーにとってみたら「もう勘弁してくだせぇよ旦那」といわれても仕方がない。
 だからずっと履いていたシューズカバーはもうぼろぼろだ。縁どりはほつれまくりつま先やかかとは何か所も穴が開いている。もちろん主たる目的は足の甲から足首にかけての防風と保温だから、それらの場所のほつれや穴で機能が損なわれるというほどのものじゃない。使えないものじゃないのだけど(いや、使える)、しかしいくらなんでもって感じだ。見ていて、ひもじい。

 

 そんなわけで新たなものを探すことにした。
 これまで使っていたのは、BBBというメーカーのものでかなりごつめ。生地は「ネオプレーン」というのだそうだ。

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 寒がりの、寒さ対策のために使っているものだけど、もちろん寒い日には寒かったし、度を越せば足の指先も痛くなった。しもやけにも何度もなった──そう、僕はすぐしもやけにもなってしまう、哀しき末端冷え性なのである。でもまあ冬用として買って、せいぜいこういうものなのだろうとは思っていた。
 じゃ新たに買うとしてどう選べばいいのか。
 同じメーカーの同じもの(あるいは継続モデル)を買うという手もある。それは正しい選択だし失敗もない。しかしながらこれを見ると、以前買ったときよりも値段が1.5倍かそれ以上に上がっていたのだ。たじろぎつつ、じゃあいっそ他のものも見てみようかと思った。

 

 今はどこも口コミなるものがついていて便利だ。でもこれがまたもろ刃の剣となりうるものだと実感した。なぜ僕がシューズカバーを欲しいか、その原点は「寒いから」であり、防寒のシューズカバーを探すも、その口コミにひと言「寒いです」と書いてあるだけで選択できなくなってしまうのだ。それは僕の選択の判断としてだけど、つい気弱になってしまうのだ。よさそうだなと思うものであっても、口コミに左右されてしまうのだ。書いた人があるいは極寒地にお住まいで日々氷点下のなかを走っているかもしれないのに。僕は日中まで氷点下の日には走らないし、極寒地には行かないのだから、一度冷静になって自分基準に照らし合わせて判断すればいいのに……。
 そんなわけで判断基準を見失い、いわば破れかぶれ状態になって選んだのがこれだった。

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 めちゃめちゃ安かった。確か1500円くらいだった。ロゴが大きく派手に刷り込まれているのはまったくもって好みじゃないけど──それは僕が使っている空気入れと同じロゴだった──、そんなところは優先的判断基準じゃなかった。足を寒さから守りたいだけだ。製品は、防水・防風とあった。
 そして、口コミは1件も付いていなかった。
 値段も安いし、捨て金になってもいいかってくらいの気分だった。写真から見る限り、これまでのネオプレーン素材じゃないこともわかった。それでもまあいっかって思った。防水・防風だけを頼りにした。

 

 

 中国から送られてきたようで、かなり時間がかかった。僕は早速これをつけて、2時間ばかり走ってみた。あれ? 寒くない? ──そう感じた。前日は関東一円雪が降り、晴れるものの気温が上がらないから雪が凍結して残る、といわれていた日だった。寒かったからヒートテック的な長袖の上に裏起毛のアンダーを着て、さらに裏起毛の長袖ウェアを着た上にウィンドブレーカーを羽織っていた。そのウィンドブレーカーをついに最後まで脱ぐことができない日だった。

 

 素材はどちらかというとエアロといわれる空力を意識したものなのか、防水を重視するとこうなるのか、つるつるした素材だった。そして薄かった。ネオプレーンのようなごつい厚さはみじんもなかった。観測史上初の寒波といわれた晴れ空のもと、正直不安だった。これまでのBBBのネオプレーンだと絶対寒くて指が痛くなると想像がつく空気だったから。
 でも、平気だった。もちろん寒くなかったわけじゃないけど、ネオプレーンと変わらないか、あるいは同等以上だった。僕は捨て金などと期待をしていなかったから、正直驚いた。指先が痛くなることはなかった。そうなるものと思っていたから、びっくりした。
 これでいけるんじゃないかって思った。

 

 

 これはよかったと喜んで帰り、心配するはどれくらいの使用でほつれたり破れたり、つまりぼろぼろになっていくのだろうということくらいになった。
 そして買ったサイトの商品ページをもう一度眺めてみる。すると、レビューが1件だけついていた。
「防寒性はありません。レインカバーにはなると思います」
 ──あれっ?
 寒がりの僕が感覚を違えたか? まさか僕より寒がりってことはなかろうし、となると、本当は今日、寒くなかったのか?

 

 もう一度、ゼロスタートでお試しかな(笑)。