自転車旅CAFE

自転車旅を中心とした紀行文、紀行小説

都内、早朝

 朝の5時台、東京・中央通りを走る。
 上野、秋葉原、神田から日本橋の各町をへて、京橋、銀座へ。
 休日のこの時間は穏やかだ。そしてコンクリートの街なのだと認識する。ふだんなら人や車の量と、それらの分子運動のような全方位への不規則な動きがあるものだから、コンクリートに囲まれている意識が希薄になる。いまは、それが、ない。灰色で、四角い街。
 見慣れない風景ではある。でもなぜだろう、慣れない静寂が当たり前に思える。自分の自転車のチェーンの駆動音だけが耳に届く。
 冬はさすがに真っ暗だけど、春になり夏に向かう時期であれば5時台はもう明るい。朝の光を受けて、色を帯びているのは空と信号機。ときおり車が並走するけれど、それもまれ。道路をひとり占め。中央通りって、こんなに広い道だったのかって思う。

 気持ちいい。

 

 

 中央通りに限らず、そうやって早朝の都内を走ることは何度かあった。これからも何度かあるんだろう。だいたい6時半くらいから車が増え始め、7時半にはやがて東京の顔になる。
 それまでなら見たことのない東京の街を自転車で体感できる。悪くはない。
 でもこれまで何度かしかなく、これからも何度かしかないんだろうなって思うのは、やっぱり走りにくいから。
 車がほとんどいないから、片側3車線4車線の道路は走り放題だ。でもね、信号だけは律義に、真面目に、言いつけを守るように、きっちり変わるんだよね。
 青、黄、赤。青、黄、赤……。
 30メートルごとに止められる。
 都内って何十メートルおきに必ずといっていいほど信号機がある。大きな通りの交差点はみな信号。──青、黄、赤。青、黄、赤。
 だっれもいない交差点で、赤信号を待つ。
 青信号に変わって進む。すぐ、次の信号が黄色に変わる。あるいはその向こうの信号で歩行者信号が点滅を始めたのが見える。
 止まる。

 

 これ、なかなかしんどいよ。
 異次元空間の楽しさ半分、意外に体力を削られるしんどさ半分。

 

 コーヒー、飲もうっと。
 マックに入れば、それもどことなく殺風景。店員は何人いるのだろう。なかなかカウンターに現れない。客もまったくいない。がらんとしているのは、店を開けたばかりのせいだきっと。

 

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