自転車旅CAFE

自転車旅を中心とした紀行文、紀行小説

栃木県道177号から古峯神社へ

 意外と無名じゃないんだ、この栃木県道177号上久我栃木線って道──。
 とちぎテレビの自転車番組「Ride On!」で、今年のツール・ド・とちぎのコースを走ってみる企画で登場したし、それはすなわちツール・ド・とちぎのコースになっていた。番組内では「宇都宮ブリッツェンの選手もよく練習に来る」といってたから、けっこうみんな知っていて、ここを走るのかとわかった。
 じっさい、今日は2台のロードとすれ違った。
 この道の秘境感が素敵だ。ときどき、走りに来たくなる。

 

 

 猪苗代湖でのサイクリングを計画していた。久しぶりに会える面々がそろって、一周しようってアイデアだった。
 ルートは湖畔を一周するのに加え、オプションで布引高原へ向かおうと引いた。布引高原は、一周してきた時点で時間や体力を見つつ、行くか行かないかを決めるプラン。
 しかしのちに布引高原への道が4月時点では冬季規制中であることを知る。
 後ろ髪を引かれつつ布引高原はあきらめたものの、他にそんな道がないかと不安になって、調べてみた。すると、湖畔西岸の県道と林道が、同じように冬季規制の期間中であると見つけた。まさか、と思った。あんな場所でも規制されているの? と思った。西岸の県道といえば、磐梯山の山容を最も美しく見られる角度のひとつ。なかなか信じられず、福島県の土木課に問い合わせまでした。しかし結果はその情報のとおりであり、県道林道の通行にはもう少しの時間を、その日に行くのであれば国道294号を走っていただきますよう、と結んであった。
 そして追い討ちのように、週間予報の週末の天気が悪かった。傘マークが全国的に並んでいた。これが決定的だった。
 延期した。
 もう少ししたら布引高原の道も通れるようになるし、風力発電のまわりに花も咲き始めます、そうしたらまた仕切りなおしましょう、そうフォローまでしてもらった。

 

 

 土曜日になると、天気は後ろにずれ込んでいた。関東で雨が降り出すのは夕方からになった。午前中から昼過ぎまでなら出かけられそうだ。
 栃木県道177号へ、行ってみよう。

 

 栃木県道177号は、検索してみると、気味悪いとか、怖いとか、異様な雰囲気とか、書いているページが出てくる。でもそんなことなはない。そんなのはインパクトのある言葉で周囲の気を引きたいだけのキャッチー・リードだ。刺激的な言葉で注目を集めたいんだ。だってこれで異様なんだったら、日本全国もっとたくさん、異様なところはある。真に受けて、こんないい雰囲気の場所をみすみす逃すなんてもったいない。踊らされずに、まあほほえましく見ておく程度でいい。
 人家のまったくない、道路拡張や補修のまったくない、徐々に自然に吸収されていく道。
 ここを走って、素の心で風景を見ればいいと思う。

 

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 それから古峰ヶ原街道に入った。
 去年の秋ぶりだったか。
 せっかくだから古峯神社まで行ってみることにした。

 

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 ごるるるるるる。
 くたびれたディーゼルエンジンのアイドリング音がする。
 ずいぶんと古風なバスがやってきた。左指示器を出し、道端に止まった。
 記憶が2、30年、引き戻される。
 乗り物に弱い僕は、乗った瞬間の臭いで酔ってしまうかもしれない。子供のころ、遠足が苦手だった。臭いの強い観光バスがダメだった。
 見てるぶんには、いい。絵になる。とても、いい。道端で待っていた女性が乗った。

 

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 そばを食べよう。

 下って、一ノ鳥居を過ぎたところの五郎八へ寄った。
 春の山菜の天ぷらを食べる。うど、たらの芽、ふきのとう。
 そばもおいしいし、タケノコと鶏の炊き込みご飯も抜群だった。
 素敵なお店だ。おいしいし。

 

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 店を出ると、空気の冷たさが違う。
 前線が通過し、寒気が南下すると朝の天気予報がいっていた。
 寒気が南下したかな。それとも両方かな。そうだとするとじきに雨になるかな。
 下って、帰ろう。