自転車旅CAFE

自転車旅を中心とした紀行文、紀行小説

輪行サイクリストのワイヤー

 電動コンポが当たり前とまでは言わないけれど、上位グレードにはふつうに搭載されるようになって、じゃあいつまで僕らはワイヤー制御のシフトやブレーキを使っていくのだろうって思うのだけど、おそらく10年とかいう単位ではまだ、ワイヤー制御を使っているように思う。固執するつもりはないけど、ワイヤーでいいし、旅自転車での電動制御のメリットが今のところは思いつかない。旅の途中での不具合対応とか──知らないのだけど、電動制御は不具合が起きないんだよって言うのかもしれない──、機械式ならなんとかできちゃうし。まるで一眼レフカメラが徐々に電子制御を装備していくころ、機械式(電池が不要)の一眼レフカメラ固執していたようでもあるけど。


 まあそんなわけで電動コンポをいつ使い始めるかなんてわからない僕らはワイヤーに頼るわけである。変速とブレーキ、このふたつ。

 ワイヤー類は消耗品で、交換していく必要のあるものなのだけど、それが面倒ゆえついつい放置してしまう。今やほとんどのコンポでハンドルを経由する取りまわしだから、ワイヤー一本を換えるにもバーテープをセットで交換しなくちゃならない。あと、カーボンフレームじゃふつうに、アルミフレームにだってある、フレーム内部を通るワイヤーの取りまわし。このフレーム内蔵型ってけっこう面倒。そして交換したら交換したで変速調整やブレーキ調整をしなくちゃならないから、張りなおしたら終わりってわけじゃないんだよね、どうしたって面倒になる。放置しがちなもの。


 でもこれ、突然ブレーキの引きが重たいなとか、変速にだるさがあったり明らかにテンポが遅れたり、気づくとそんな不都合を引き起こす。

 もちろんワイヤーが原因のすべてではないから、そのつど原因箇所を突き詰める必要があるけど、だいたいワイヤーが疑われる。自転車屋さんで聞いたってワイヤーを疑ってくる。一度、ブレーキの引きが重くなってワイヤーを疑ったものの、じっさいにはブレーキ本体の汚れで、右アームと左アームの重なったすき間に泥だか油だかそんな汚れがびっしり付いてしまっていて、パーツクリーナーを流し込みつつ薄い紙とかを使ってごしごし汚れをこそぎ出したらすっかり良くなったことがあったけど、まあ大半はワイヤーだと思う。

 インナーワイヤーが錆びちゃって、滑りが悪くなってということが多いと思うんだけど、僕らのような輪行をよくする自転車の場合、アウターワイヤーの内部破損が少なからずあったりする。


 というのも、ほとんど大半の輪行袋が、ハンドルを90度、あるいはそれ以上の角度で真横に曲げて収納するから。

 この「ハンドルを90度横にする」っていう行為が、輪行以外ではほぼないこと(90度もハンドルを切ってカーブを曲がることなんて絶対にないからね)。

 90度曲げてみるとわかるのだけど、4本のワイヤー(シフト×2、ブレーキ×2)はきわめて不自然な恰好になる。大きく引っ張られるか、余りが出てたるんでよじれるようになるか。

 これがワイヤー、特にアウターワイヤーによくないと思う。インナーワイヤーはおそらくこんなこと問題ないのだろうけど、アウターはこの曲げ行為によって内部破断を起こすことがある。

 アウターワイヤーって外は被膜、いちばん内側も被膜で覆われているけど、その張りを支えているのは細いワイヤーをよったより線でできている。内側被膜やこのより線が破断すると、中でささくれ立ってしまう。よくインナーワイヤーの切断部をささくれ立ててしまうことがある(そうならないようにキャップは付いているんだけどね)けど、アウターの内部でそれが起きていても見えないし、ささくれがインナーワイヤーと干渉したら途端に引きが悪くなるだろう。

 だから引きが悪いから交換しようと、今使っているワイヤーを外してみると、意外にインナーワイヤーはきれいだったりもするんだ。


 じゃあ、リアディレーラーのところに刺さっているアウターワイヤーは大丈夫なのって思うのだけど、もしかしたらあれは一度90度以上のUターンを作って、動かすことがないから平気なのかなあって思った。右チェーンステーから「?」を横にしたような角度で張っているアウターワイヤーのこと。



 そんなことを考えていたら、出かけるとなれば8割くらいは輪行でサイクリングをしている僕などもっとこまめにワイヤー交換をやらなきゃなあ。コーティングされた高級なインナーワイヤーを使ったところで、アウターワイヤーがダメになって重くしているようじゃ高級インナーワイヤーも活かせないもんね。──使ってないけど。