自転車旅CAFE

自転車旅を中心とした紀行文、紀行小説

寒くなったら行くところ

 急に寒くなった。秋をどこかに忘れてきてしまったみたい。

 ちょうどいい気候で走れる時期だからとても楽しみにしてたのに、哀しい気持ち。


 季節が駆け足で行ってしまうことで紅葉が見られなかったとしても、それはそれで僕はかまわないのだけど──もちろん、見ることができるのなら見に行くけど──、寒い季節が長いことはこたえるなあ。

 いつ気づいたのかもう忘れたけれど、僕は他の人から比べて特に寒がりのようだから。


 冬になるとサイクリングに行く場所が限られてくる。

 寒がりの大前提を置いといても、まず山や高原は難しい。雪に埋もれたらもちろん走れないし、そうならずとも凍結があったら無理。だから北方や内陸の峠や、標高の高い場所は行かなくなる。

 加えて寒がり人間はさらに範囲を狭める。北関東のからっ風を受けていると凍えて、身長がちぢんでしまってるんじゃないかって思うほどちぢこまってしまうから、雪や凍結がないにしても、北に気持ちは向かなくなる。

 となるともう残りの選択肢なんてきわめて少ないカードで、言ってしまえば房総、三浦、伊豆、──そんなところ。


 毎年毎年のワン・パターンで飽きてしまいそうだけど、暑い時期にはほぼ行かない(ようにしている、のかな無意識に)ので、飽きるということはない。ただまあ目新しさも欲しいなあというのも事実。



 昨年の12月、旧道笹子峠(県道212号)の笹子隧道を越えた。僕にしては12月になって標高千メートルの場所に行ったというのが初めてで画期的。でもなかなかそんな標高へ行こうという動機付けもない。じっさい、旧道笹子隧道は僕が出向いた翌週から冬季閉鎖に入った。まあ言わばこれで、雪が降ろうが凍結しようが、何も手を入れないよという宣言なわけだ。

 それを除くと冬の時期に行ったいちばん高いところというと、記憶にある範囲で伊豆半島西伊豆スカイラインかなあ。達磨山付近を通過する、伊豆の最高地点が標高900メートル。たいてい天気のいい日を選んで出かけているし、そもそも温暖な伊豆半島だから問題なしなのかもしれない。


 寒がりの寒さ対策っていう点を考えると、日差しの暖かさは大きい。冬の太陽って本当にありがたくって、日の光を全身に受けていればなんとかなる気がする。

 そしてその日の光が、房総、三浦、伊豆といった方面のほうが暖かく感じられるんだよね。気のせいかもしれないけど。

 そうなると、手を広げられる範囲はやっぱり数限られるんだろうか。


 たとえば、伊豆にきわめて近く、同じ国立公園内の箱根なんてどうなんだろう。──じつは僕、いまだ箱根に上ったことがない。国道1号にせよ旧街道にせよ。今年、足柄側から金時隧道を経て仙石原へ出たことはあるものの、そもそもそのとき計画していたルートじゃなかったし、なんだか裏口から入ったような気分で、箱根を訪ねた気になってない。まあそれはよくて、冬の箱根って凍らないのだろうか。そして寒くないのかな。まあ駅伝で上るくらいだから行けないことはまったくないと思うけど。

 静岡のほう、たとえば安倍川遡上や大井川遡上はどこまで行けるかな。大井川鉄道に沿って千頭だったらまずまず行けそうな気がする。井川までとなるときついかな。もうあの辺りになると勘も働かない。

 逆に平地に限定してみると北方面はどうなんだろう。

 群馬は渋川より先は難しいかな。沼田や中之条あたりでも雪は降るし路面も凍る。そもそもスキーに行くような場所の感覚だ。

 茨城も水戸を越えて奥久慈方面に入って行くのはどうなんだろう。思い出してみたらあの袋田の滝さえ凍るしね、ないよな。

 そう考えると山や峠に向かわなくても凍結のありそうな北のほうは選びづらい。それに想像すると寒さに耐えられないんじゃないかって、それだけで身体に震えが起きてしまう。


 そう考えるとやっぱり海に近い県、これが答えなのかなぁ。結局考えたところで、毎年変わらないんだ……。